『ある都市のれきし 横浜:330年』を読む

 先日紹介した万城目学・門井慶喜『ぼくらの近代建築デラックス!』(文春文庫)に、門井が横浜の街なみの歴史ではこの本が良いと薦めていた。

横浜の街なみの歴史に関しては『ある都市のれきし――横浜・330年』(北沢猛作、内山正画、福音館書店)がすばらしい。1985年刊の古本だし、子ども向けの絵本だし、たった39ページしかないけれど、私はこれ以上よくわかる本を知らない。大人の愛読をお勧めします。


 門井が言うとおり、これは『月刊 たくさんのふしぎ』という小学生向けの絵本シリーズの1冊だが、江戸時代から横浜が港を中心にしてどんな風に発展してきたのかよくわかる。最初は細長い砂州に囲まれた入江だったのだ。明暦2年、1656年の横浜村の戸数は数十戸だった。入江が埋立てられ、交易のために港が作られ、明治25年にはもうびっしりと家が立ち並んでいる。大正11年には波止場も整備され、現在の横浜の地形がほぼ出来上がった。しかし、翌年の関東大震災で街は壊滅、炎と黒煙が街を覆っている。昭和10年、街は再びよみがえる。野球場や体育館、音楽堂も作られる。ところが昭和20年、横浜大空襲で街は再び壊滅する。戦後の復興の結果「1986年(昭和61年) 今、横浜は」と題された横浜の俯瞰図が掲げられている。みなと未来はまだできていないけど。
 以上の歴史がすべて見開きの俯瞰図として示されている。とても良い横浜の歴史を表している。この『月刊 たくさんのふしぎ』シリーズは小学生向けと謳っているにも関わらず、ときどき大人の鑑賞にも十分耐える高度な内容が企画されているのだ。



ある都市のれきし―横浜・330年 (たくさんのふしぎ傑作集)

ある都市のれきし―横浜・330年 (たくさんのふしぎ傑作集)