村上慧『家をせおって歩く(かんぜん版)』を読む

 村上慧『家をせおって歩く(かんぜん版)』(福音館書店)を読む。福音館の発行する『月刊たくさんのふしぎ』という小学生向けの雑誌として刊行されたものを改訂・増補した「かんぜん版」。絵本の体裁をとっている。作者は1988年生まれ、武蔵野美術大学建築科を卒業している。

 2014年4月から自作した発泡スチロールの家を使って生活を始める。家の大きさは120m×80cm、高さ150cm、床にキャンプ用のマットを敷き寝袋で泊まる。屋根もドアも発砲スチロール製、神棚も郵便受けもある。衣類を始め、日常品をリュックに入れて持ち歩いていて、家とリュックを合わせた重さは25キロくらい。この家を背負って東京から東北~日本海~富山~大阪まで歩いている。



 ただ、泊まるために家を置く場所は、公園や道路には勝手に置くことができないので、お寺や神社やお店などに毎回交渉して置かせてもらっている。

 村上は毎回家を置いた場所を写真に撮っていて、それが本書にも紹介されている。持ち歩いている品の中に耳栓があって、なぜと思ったら屋外で虫の声がうるさいことがあるという。トイレとお風呂も毎回探さなければならないが、手ぶらで知らない町を歩くのはわくわくしますという。食べ物は基本的にコンビニやお弁当屋さんで買う。空の500mlペットボトルは緊急トイレ用。

 各地で家の絵を描いている。日本ばかりではなく、スウェーデンにも行っているが、さすがに家は運べなくて現地で新しい家を制作した。日本と違って町中で使えるトイレが少なかったそうだ。韓国へも行ったが、この時はフェリーで運んでもらった。家の運賃として1000円支払った。

 村上は別の本『家をせおって歩いた』(夕書房)でこの間の日記を公開している。それも読んでみよう。