私も20歳からもう半世紀近く働いてきた。その間に身につけた仕事の極意を公開したい。
まず重要なモットーを紹介する。
・仕事に関しては「面倒」と言わない。
仕事というものは総て面倒なものなのだ。あえて面倒なことをして対価を得ている。仕事に対して面倒だと言ったらある種の自己否定になってしまう。だからその言葉を使わない。私は新入社員には必ずこのことを言ってきた。そして面倒という言葉を封印すると、いつしかどんな仕事に対しても面倒だと思わなくなる。その結果仕事に対するストレスが大幅に軽減されることになる。
また、仕事の大きな一面は対人関係だろう。常識的な事柄がまったく通じない人間がいるものだ。そのような時の呪文がこれだ。
・愚かを相手のたたかいには神も手を焼く。
これはドイツの詩人シラーの句だという。ジョン・ル・カレの『スマイリーと仲間たち』(ハヤカワ文庫)で知った。神ですら手を焼くのだ、愚かを相手とした時には。常識さえ通用しないのだ。仕方ない。
さらに無知蒙昧の輩を相手にしなければならない時もある。
・蟹は己の甲羅に似せてその穴を掘る。
自分の大きさでしか相手を理解できない輩がいるのだ。蟹のような輩が。蟹や愚かを説得することはほとんど至難の技なのだ。そう考えて自分を納得させてきた。
- 作者: ジョン・ル・カレ,村上博基
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1987/04/15
- メディア: 文庫
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