三岸節子と野見山暁治

三岸節子野見山暁治が別々の著書で偶然同じことを言っていた。


二人ともフランスから日本に帰ってきたとき、こんなに湿っぽく色のないところでどんな絵を描いたらよいのだろうと途方にくれたという。


しかし実際には二人ともしっとりした色彩の優れた画家になったのは誰でも知っているとおりだ。


フランスにいた頃野見山は田淵安一と友だちで一緒にイタリア旅行などをしていた。野見山と違い田淵は日本に帰ることなく、フランスで絵を描き続けていた。数年前鎌倉近代美術館で初めて田淵の絵を見た。突き抜けたように明るく乾いた色彩で少しも湿っぽいところがない。


そういう言い方も正確ではない。たとえば紫陽花やツツジがヨーロッパへ持ち帰られ、あちらで品種改良されてハイドランジアやアザレアになって日本にもたらされた、その花色の変化にも似ている。


三岸や野見山があのままフランスにとどまっていたら、こんな乾いた軽い色彩になっていたのだろうか。二人とも帰国して良かった。