Kanzanギャラリーの黒田大祐「ハイパーゴースト・スカルプチャー」を見る

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 東京東神田のKanzanギャラリーで黒田大祐「ハイパーゴースト・スカルプチャー」が開かれている(2月17日まで)。黒田は1982年京都府生まれ、2013年に広島市立大学大学院研究科総合造形芸術専攻(彫刻領域)を修了している。近年は「不在の彫刻史」と題した、彫刻にまつわる物語について調査し作品を制作しているという。
 本展に関する記載が画廊のホームページに載っている。

1930年代、東京美術学校彫刻科の建畠大夢(彫刻家, 1880-1942)の教室にはさまざまな国から彫刻家を志す若者が集っていました。留学生の多い時期でもあり、日本が帝国主義的な支配を拡大していった時代でもあります。建畠教室で学んだ学生たちはそれぞれの都合で母国に戻り、作家活動のかたわらで、高校や大学といった教育機関で美術教師としてその国の後進に影響を与えていったようです。
韓国の仁川(Incheon)にはマッカーサー像が建てられています。この作者の金景承(彫刻家, 1915-1992)は建畠教室で学んでいました。この金景承と同じ頃に学んでいた文錫五(彫刻家, 1908-1973)という人物は、朝鮮戦争後の北朝鮮金日成像やスターリン像を手がけています。さらに建畠自身も1938年に伊藤博文像を制作し、現在においても国会議事堂の中に鎮座しています。
同じ時期ある教室で共に過ごした彫刻家たちが、自国の権力者の像を形づくっていた時代性も興味深いのですが、それ以上に彼らがその制作と同時に、近代芸術としての「彫刻」をそれぞれの国において、教育者として従事し伝えていったことに着目しています。「彫刻」は技術と美学をまるで伝言ゲームのように後進に受け継いでいったとも考えられます。
本展は「ハイパーゴースト・スカルプチャー」と題して、美術家の黒田大祐が彫刻家・建畠大夢の周辺とその教え子たちに焦点をあて、日本、中国、韓国、台湾といった東アジアを巡って制作したリサーチベースの展覧会です。
インタビューなどを行ない、東アジアに横たわる「彫刻」概念の様相と、彫刻教育について迫っていったリサーチを基に、制作活動として展開させ、映像作品を中心に構成しています。展覧会は、作品発表としての「ハイパーゴースト・スカルプチャー」(Kanzan Gallery)をメイン会場とし、リサーチを重点的に紹介するサテライト会場「不在の彫刻史2」(3331 Arts Chiyoda)を設けて、2つの会場で開催します。

 3331アーツ千代田の個展会期は終わっていて見そびれてしまった。Kanzanギャラリーの個展は映像作品を同時に複数上映している。メインの映像は、黒田が小さな人物像を作っているところを撮影している。黒く塗られさらに鳥の翼が描かれた両手だけが映し出され、それにつぶやきのような言葉がかぶさっている。
 日本の彫刻家(建畠大夢)が伊藤博文の像を作りそれは現在国会議事堂内に展示されている。その弟子が韓国でマッカーサー像を作り、別の弟子が北朝鮮金日成像を作り、別の弟子たちは中国や台湾などで毛沢東孫文蒋介石マルクスの像を作っている。そう語りながら小さな粘土像を黒い手がこねくり回し、蒋介石マルクスに作り変えている。『「彫刻」は技術と美学をまるで伝言ゲームのように後進に受け継いでいったとも考えられます。』
 別の映像では彫刻とは何だろうと自問する言葉が繰り返し流れている。
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黒田大祐「ハイパーゴースト・スカルプチャー」
2019年1月18日(金)-2月17日(日)
12:00-19:30(日曜は17:00まで)月曜休廊
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Kanzanギャラリー
東京都千代田区東神田1-3-4 KTビル2階
http://www.kanzan-g.jp
JR馬喰町駅2番出口より徒歩3分
都営新宿線馬喰横山駅A1出口より徒歩4分
東京メトロ日比谷線小伝馬町駅より徒歩4分