井上ひさしの朗読劇「リトル・ボーイ、ビッグ・タイフーン」

 井上ひさしの朗読劇「リトル・ボーイ、ビッグ・タイフーン」を見た。日本ペンクラブ主宰の「災害と文化。」というフォーラムがあり、その一環として新宿の全労済ホール/スペースゼロで2月22日と24日の2回だけ上演された。演出が栗山民也、出演が新国立劇場演劇研修所第2期研修生14名、生演奏のギターが宮下祥子だった。
 朗読劇なので舞台に14人が椅子に座って並び、手に台本を持って交代で朗読する。ときに少しだけ身振りを交えて。
 広島に原爆が投下される少し前から芝居が始まり、生き残った3人の小学生たち、それに広島新聞に勤める女性と老哲学者のあわせて5人が主な主人公。原爆の被害が次々に語られていく。圧倒する言葉の強さ。井上ひさしの真骨頂だ。
 輪転機が壊れてしまって新聞が発行できない広島新聞は、街角で口頭で記事を読み上げて新聞の代わりにすることにした。その口伝者に3人の小学生が選ばれる。アメリカ軍が来るから慰安所を用意することにしたという記事の意味が分からなくて、3人の小学生は老哲学者に聞きに行く。それはアメリカ軍をもてなすという意味だと言われて、小学生たちは数か月前まで徹底的に闘うはずだった相手をどうしてもてなすのかと混乱する。
 原爆投下の2か月後広島を大きな台風が襲い、山崩れが頻発して2,000人が亡くなってしまう。3人の小学生の一人がその時行方不明となり、もう一人がまもなく原爆症で亡くなる。15年後に残った一人も原爆症で亡くなってしまう。
 広島への原爆投下を描いた井上ひさしの「父と暮らせば」に匹敵する名作が誕生した。この芝居は川崎市新百合ヶ丘にできた新しい劇場「アルテリオ小劇場」のこけら落としとして、同じメンバーで3月7日(金)19:00と3月8日(土)13:30に上演される。前売り500円、当日1,000円。お勧めです。
http://kawasaki-ac.jp/theater/080216/index.html