日本語の消滅がせまっている!

 言語学者田中克彦岩波書店のPR誌「図書」2月号に「『ことば喰い』の世紀のエスペラント」というエッセイを寄せている。
 現在地球上で使われている約7,000の言語のうち、半数が今世紀中に姿を消すという。人々が自分の言葉を捨てて大言語に乗り換えていくからだ。フランスの言語学者アントワーヌ・メイエもマルクス主義者のカール・カウツキーもそうあるべきだとした。特にカウツキーは、「世界が有力な少数の世界語、具体的には独、仏、英語、それに必要であればイタリア語などにまとまって行くのが望ましいと考えていた。」
 現在の雰囲気では、言語の多様性は人類文化の豊かさを反映したものとして受けとられている。しかし、次のような問題がある。

 いくつかの方言群が、ある有力な言語を中心にしてまとまろうという努力が行われているさ中に、権力が干渉して、それらは方言ではなく、独立の言語だとして、別の言語に仕立て上げる。そのことによって一つの民族になり得るはずの集団を別の民族へと分断する。このような政策的な言語の増大は、その言語の話し手集団の発展にとって致命的な損失をもたらす。いったいこのような場合、言語の多様性が維持されたなどと喜んでいいものだろうか。

 さてわれらが日本については、

 いまや官民一体となって日本人の英語化をすすめている日本では、あと20年のうちに、大学の講義から自然科学と社会科学の一部で日本語が撤退することさえ予想される。つまり、学術の分野における日本語の消滅がせまっているのである。

 これが田中克彦さんの杞憂に終われば良いのだが。