アートギャラリー環の野津晋也展「ふくら芽」を見る


 東京神田のアートギャラリー環で野津晋也展「ふくら芽」が開かれている(10月20日まで)。野津は1969年島根県松江市生まれ、1992年に鳥取大学農学部を卒業した。さらに2000年に東京芸術大学美術学部油画専攻を卒業し、2002年に同じく東京芸術大学大学院油画専攻を修了している。今までにアートギャラリー環や表参道のMUSEE Fなどで個展を行っている。野津は現在の日本では珍しいシュールレアリズムの画家だ。
 今回のタイトルは「ふくら芽」、これは熱帯植物のモンステラのことらしい。展覧会のちらしに野津が書いている。

 どうやら私はモンステラに取り憑かれてしまったようだ。赤い背表紙のスケッチブックを片手にぶら下げ、植物園に出かけて行っては、何時間でもモンステラを観察している。
 モンステラは熱帯地方原産の植物で、深い切れ込みの入った大きな葉が特徴である。茎の根元付近が次第に膨らみ、そこから枝分かれしながら新しい幼葉が成長する。ただ、冬になると東京の気候が甚だ堪えるせいか、パッタリと成長は止み、身動き一つしなくなる。このモンステラの不思議な生態に取り憑かれ、私はいつのまにかそれに倣うようになった。
 今では、部屋の床一面に土を敷き詰め、冬の寒さにも負けないよう暖房設備を完備して、モンステラにとって最適の生育環境を整えた。
 ところが、土からの湿気と臭気だけはどうにも我慢ならず、急いで窓を開け放つ。
 するとどうした訳か、目の前にはモンステラの巨大な葉の重なりが視界を遮った。よく見ると、葉同士のわずかな隙間からは件の植物園の柵がうかがえる。
 そして、その柵の向こうから、赤い背表紙のスケッチブックをぶら下げた男がやって来て、まるでアカの他人でも眺めるように、ジッとこちらの様子を観察してくるのだった。







この上下で1枚の絵

 大きなナイフが古いビルを切り裂いている。巨大なスプーンがぐにゃりと垂れ下がっている。巨大なモンステラの葉が屋根を突き破って伸びている。画廊1階に展示されている左右に長い絵は、混みあって立ち並ぶ古いビルの窓からモンステラが伸び、大きな手がそれを掴み曲がったナイフが茎にぶら下がっている。
 最近少なくなったシュールレアリズムの世界を見てほしい。
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※JR神田駅東口を出て中央通りを右折し(三越方向へ向かい)、カメラのキタムラの先を右折、すぐに老舗の蕎麦屋「砂場」があり、その手前を左折するとすぐ。(徒歩3−4分)
あるいはJR新日本橋駅または地下鉄三越前駅下車、連絡通路にて2番出口より徒歩3−4分
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野津晋也展「ふくら芽」
2018年10月8日(月・祝)−10月20日(土)
11:00−18:30(最終日は17:00まで)日曜日休廊
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アートギャラリー環
東京都中央区日本橋室町4-3-7
電話03-3241-3920
http://www.art-kan.co.jp/