2011-01-01から1年間の記事一覧

厳しく美しいミニマル絵画、古藤典子展

東京銀座1丁目のギャラリー現で古藤典子展が開かれている(12月3日まで)。古藤は1954年埼玉県浦和市生まれ、1979年に武蔵野美術大学大学院を修了している。みゆき画廊、ギャラリーQ、ギャラリー檜などで個展を重ね、ギャラリー現では2009年、2010年に続い…

パーソナルギャラリー地中海の中津川浩章展「記憶の痕跡 The trace of memory」を見る

東京渋谷区代官山のパーソナルギャラリー地中海で中津川浩章展「記憶の痕跡 The trace of memory」が開かれている(12月10日まで)。中津川についてはほぼ5年前のマキイマサルファインアーツでの個展を紹介したことがある。その時の紹介文から、 中津川の個…

佐藤優『インテリジェンス人間論』を読む

以前、佐藤優の『国家の罠』を読んでいたら、ロシアの大統領エリツィンが男同士でディープキスをすると書かれていた。もう少しレベルの高い親愛の情の示し方もあるのだが、それは日本の文化とかなりかけ離れているのでここでは書かないでおこう、とあって、…

白銅てい画廊の高島進展が興味深い

東京京橋の白銅てい画廊の高島進展が興味深い(12月3日まで)。(「白銅てい」の「てい」の漢字は、「革」偏に「是」と書く)。高島は1959年兵庫県生まれ、1982年に武蔵野美術大学建築学科を卒業したあと、1984年に武蔵野美術学園油絵科を卒業している。そ…

アートギャラリー環の野津晋也展「接景考」

東京神田のアートギャラリー環で野津晋也展「接景考」が開かれている(12月3日まで)。野津は1969年島根県松江市生まれ、1992年に鳥取大学農学部を卒業し、2000年に東京芸術大学美術学部油画専攻を卒業し、2002年に同じく東京芸術大学大学院油画専攻を終了…

みゆき画廊で野見山暁治展が始まった

銀座のみゆき画廊で野見山暁治展が始まった(12月3日まで)。京橋のブリジストン美術館で大規模な野見山暁治展が開かれている(10月28日〜12月25日)が、みゆき画廊では人物、主に裸婦を描いた水彩を展示している。1969年の作品から2011年の新作までの約20…

『評伝 野上彌生子』を読む

岩橋邦枝『評伝 野上彌生子』(新潮社)を読む。副題が「迷路を抜けて森へ」といい、これは野上の代表的長篇『迷路』と『森』に掛けている。とても優れた評伝だった。野上の顕彰すべきところはきちんと顕彰し、欠点もちゃんと指摘している。 野上彌生子は野…

最近の化粧技術の進歩に驚く

電車の中で若い女性が化粧をしているのを見た。それも口紅やアイシャドウのような最後に仕上げではなく、顔全体に何て言うのだろうファンデーション? を塗り込んでいた。ずいぶん厚みのあるものだった。こんなものを塗って基礎を変えれば、どんな顔に作りか…

ラッセンを歌った立花開の短歌

1993年愛知県生まれの高校3年生の立花開(はるき)が第57回角川短歌賞を受賞した。その作品から、 ラッセンが以前飾られていた部屋微かに海がまだ鳴っている 彼女が歌っているラッセンは版画家で、版画とはいえ数十万円もした。ヒロ・ヤマガタも同様だった…

ギャラリー77の落田洋子新作油彩画展「MAY I HELP YOU?」

東京銀座7丁目のギャラリー77で落田洋子展「MAY I HELP YOU?」が開かれている(11月25日まで)。落田は1947年埼玉県生まれ、1968年武蔵野美術短期大学商業デザイン科を卒業している。 落田洋子はほとんど毎年このギャラリー77で個展を開いている。人気のあ…

半藤一利「荷風さんの戦後」を読む

半藤一利「荷風さんの戦後」(ちくま文庫)を読む。半藤一利が永井荷風の日記「断腸亭日乗」に即して戦後の荷風の生活をたどっている。半藤が荷風を尊敬していて、だから視線が暖かい。戦後熱海の知人宅に一時世話になったが、ようやく東京、正確には千葉県…

ギャラリー58の松見知明展の大きな木彫

東京銀座4丁目のギャラリー58で松見知明展が開かれていた(11月19日まで)。松見は1988年福井県生まれ、2010年に福井大学教育地域科学学部を卒業し、現在福井大学大学院教育科美術専攻在学中。今回が初個展となる。大きな木彫作品(重量約280kg)と半身像、…

宇宙〜量子力学〜時間に関する3冊

村山斉『宇宙は本当にひとつなのか』(講談社ブルーバックス)を読む。副題が「最新宇宙論入門」で、それは本当に驚くべき宇宙の姿だ。最初に「宇宙の構成」という円グラフが提示されている。星と銀河はたったの〜0.5%、ニュートリノ〜0.1−1.5%、普通の物…

「気」のスポット分杭峠(ぶんぐいとうげ)

職場の先輩が、あんたの田舎に分杭峠という所があって、とても「気」の強い所なんだってねと教えてくれた。調べてみると長野県伊那市と大鹿村の境ちかくにある所らしい。大鹿村は原田芳雄が主演した「大鹿村物語」の舞台となったあの村だ。 いつも頭を刈って…

俳句の季語「帰り花」

先日秋に咲いたボケの花を狂い咲きと書いたが、俳句の冬の季語で、帰り花、返り花、忘れ花とも言うらしい。近所の団地の公園に植えられている山茶花に1輪ぽつんと花が咲いていた。帰り花だ。 「帰り花」について、「今はじめる人のための俳句歳時記」(角川…

警視庁の広告にもの申す

朝日新聞に警視庁の広告が載っていた。ほぼ全7段という大きな広告。 そのキャッチフレーズ、 けん銃を 持つな 持たすな 社会の目 ビジュアルは大きく夕暮れの横断歩道があり、その先に薄暗い雑踏が見える。画面の左端に男が立っていて、下ろした右手が拳銃…

外国語の難しさ

朝日新聞2011年11月7日朝刊に、朝日の記者にもウイルスが組み込まれたメールが来たと紹介されている。北京駐在の峯村記者あてに、なりすましメールが来た。その一部、 峰村先生 先生の中国航空母艦についでのニュスを拝読したいことがあります。先生の頑張…

hayakarさんが亡くなった

hayakarさんが亡くなった。ブログの「hayakarの日記」を書いていた早川さん(id:hayakar)だ。9月11日に亡くなったという。三上さん(id:elmikamino)と中山さん(id:taknakayama)が教えてくれた。早川さんが亡くなったと聞いてもなかなか実感が湧かなかっ…

ポルトリブレの林晃久展「ナインシックス」が楽しかった

新宿2丁目のfree art spaceポルトリブレの林晃久展「ナインシックス」が楽しかった(11月14日まで)。画家は林晃久だが、会期中、会場にいるのは林の分身であるマロンちゃんだ。マロンちゃんは週1回新宿ゴールデン街でママもしているらしい。何か月か前、…

「死の蔵書」はお薦め

ジョン・ダニング「死の蔵書」(ハヤカワ文庫)を読む。よくできたミステリで堪能した。謎も最後まで分からなかった。主人公の警官が古書のコレクションが趣味というインテリで、そのことが事件と深く絡んでいく。古書に関してあまりにも詳しいのは、あとが…

ギャラリー現の古澤信二展「流動としての領域」が興味深い

東京銀座1丁目のギャラリー現で開かれている古澤信二展「流動としての領域」が興味深い(11月12日まで)。古澤は昭和34年山形県生まれ。2年前にもこの画廊で個展を開いている。 2年前と同じく独特の手法を使っている。絵の具を塗った画面をスチールの角材…

なびす画廊の新井コー児展がおもしろい

東京銀座1丁目のなびす画廊で恒例の新井コー児展が開かれている(11月12日まで)。新井は1973年群馬県高崎市生まれ、1996年に多摩美術大学油画専攻を卒業している。なびす画廊では2004年から今回で8回の個展を開いている。いつもの女子高生らしい女の子が…

ぎゃらりぃ朋の菅谷文雄展

東京銀座1丁目のぎゃらりぃ朋で菅谷文雄展が開かれている(11月12日まで)。菅谷は1951年生まれ、八木沼笙子に師事している。1975年よりギャルリーヴィヴァンや木の葉画廊など多くのギャラリーで個展を行ってきた。今回は鳥の巣や枯れ枝、花梨の実、アジサ…

「名画の言い分」に脱帽

木村泰司の「名画の言い分」(ちくま文庫)を読んだ。広告で「西洋絵画は見るものでなく読むものだ」とあり、絵画は見るものに決まっているじゃん、なんでえペダンチックな野郎だと思った。しかし、毎日新聞2011年8月28日の書評欄で高樹のぶ子が絶賛してい…

町山智浩「USAカニバケツ」を読む

町山智浩「USAカニバケツ」(ちくま文庫)を読む。副題が「超大国の三面記事的真実」で、要するにアメリカの新聞雑誌に載ったスターやスポーツ選手などのスキャンダルやゴシップを紹介している。アメリカのジョーク集かと勘違いして買ってしまったのだった。…

秋に咲くボケの花

11月になったというのに、公園の一角でボケの花が咲いている。ボケは春の花だ。しかし、これを狂い咲きと呼ぶのは残酷な気がする。ただ季節を間違って咲いただけじゃないか。「ヴェニスに死す」だって老人が少年を愛する話だったし、老いらくの恋って言い方…

Shonandai MY Galleryの郡司宏展

六本木のShonandai MY Galleryで郡司宏展が開かれている(11月8日まで)。郡司は1952年東京都生まれ、始め版画を制作していたが、20年ほど前からタブローを発表している。個展は1985年のシロタ画廊をはじめ、空想ガレリア、中和ギャラリー、ギャラリートモ…

BLDギャラリーの柴田敏雄展の不思議な写真

東京銀座2丁目のBLDギャラリーで柴田敏雄の写真展「concrete abstraction」が開かれている(11月6日まで)。タイトルはコンクリートの抽象だろうか。そのうちの1点が特に不思議な写真だった。 ほとんど垂直のコンクリートで固められた壁面があり、そこに…

多摩美術大学美術館の吉田哲也展がすばらしい

東京都多摩市にある多摩美術大学美術館の吉田哲也展がすばらしい。いや正確には「表現する葦」という企画展で、美術館の1階に若林砂絵子の作品を展示し、2階の2部屋を使って吉田哲也の作品を展示している。 吉田哲也の彫刻作品はみな小さい。右の部屋には…

梅鉢草と蟻

先月末、墨田区の小さな植物公園に梅鉢草(ウメバチソウ)が咲いていた。ウメバチソウは植物図鑑によれば、ユキノシタ科の多年草、花期は8〜10月、茎の先に梅の花に似た白い花を1個つけるとある。 小さな花だ。近づいてよく見ると虫が動いていた。赤褐色の…