毎日新聞2011年12月4日の「今週の本棚」の「この人・この3冊」のコーナーで、養老猛が北杜夫の3冊を選んでいる。
1.『どくとるマンボウ航海記』(北杜夫著/中公文庫/新潮文庫)
2.『どくとるマンボウ昆虫記』(北杜夫著/新潮文庫)
3.『どくとるマンボウ青春期』(北杜夫著/新潮文庫)
北杜夫の作品には二つの型がある。一つはどくとるマンボウもので、エッセー、旅行記、記録ものなど、もう一つが芥川賞となった『夜と霧の隅で』に代表されるいわば正統的な文学作品である。真面目に紹介するなら後者をとるべきであろう。でも私は前者から『どくとるマンボウ航海記』『どくとるマンボウ昆虫記』『どくとるマンボウ青春期』を愛読者として選びたい。
この3冊をこの機会に再読してみた。やはり面白い。なにより懐かしい。それは単なる懐旧の情ではないと思う。(後略)
私は養老猛にちょっとばかり異議を申し立てたい。やはり正統的な文学作品を外すべきではない。では何を選ぶか。小説としては『楡家の人々』が代表作だろう。しかし私は父斎藤茂吉の伝記である茂吉4部作『青年茂吉』『壮年茂吉』『茂吉彷徨』『茂吉晩年』(岩波現代文庫)を押したい。岩波書店のPR雑誌「図書」で1988年1月号から1998年3月号まで11年間連載したものだ。連載中も楽しみで読み、単行本が出版されたときも読んだのだった。優れた伝記だ。
「青年茂吉」が始まったのと同じころ、「図書」で阿川弘之の「志賀直哉」の連載も始まった。両者は何年も並行して掲載されていた。「図書」が送られてくると、この2つを読むのが楽しみだった。いつまで続くのかと楽しみにしていたが、やはり躁鬱粘着気質の北に阿川は敵わなかった。10年の連載は半端ではない。やはりこれが北杜夫の代表作と言うべきだろう。
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