先頃亡くなった立川談志の『談志映画噺』(朝日新書)を読む。とても優れた映画のガイドブックだ。談志が映画に対して深い愛情を抱いていたことがよく分かる。多数の映画評論家たちのガイドブックでなく、1人の主観に偏向したガイドブックという試みがここでは大変成功している。
家元、ハッキリ言おう。フレッド・アステアの他にダンサーはいないのだ。(中略)
98歳、まだお元気でカクシャクたる双葉十三郎先生に言わせると、「アステアは踊り手だけど、ジーン・ケリーは土方」だとさ。(中略)
当然のことながら、家元、アステアの映画は全部みてます。それも何回も。
好きなコメディアンは、
懐かしきコメディアンとして、家元の頭の中に入っているのはやっぱりキートン、チャップリン、そしてロイドですかな。
まあ総合的にはチャップリン、アメリカの都会的にはロイド、(中略)
アナーキーなのがバスター・キートンで、あたしはバスター・キートンが一番なのです。
一時ハリウッドの赤狩りも含めて、あれはイケナイ、あれはダメときた時に(ビリー・)ワイルダー、スパイのペニスに暗号を書き、それがエレクトしないと読めない、おまけにこのスパイ、ホモで……云々。こんなのを癪(しゃく)だから作るか……、と言ったという。
『カサブランカ』のハンフリー・ボガードを"ダンディ"というのはちょっと違うと談志はいう。
"ダンディズム""ってのは元々、イギリスの宮廷貴族から生まれたものだけれど、そこにはイギリス的な"ダンディ"の定義というのがある。
まずは、「背筋がピンとして、スラッとしていなきゃいけない」。その意味では、ゲーリー・クーパーなんぞはちょっと猫背だから違うし、ボギーも違う。デビッド・ニーブンあたりが"ダンディ"の代表でしょう。オーッ、若き日のエジンバラ公。
本書は映画のガイドブックだから、談志お薦めの映画が列挙されている。これを参考にしてDVDを借りて見たいと思う。とても良いガイドブックだ。
これは図書館で借りたのだが、手許に置きたくて書店に注文したのだった。
- 作者: 立川談志
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2008/11/13
- メディア: 新書
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