脚本家倉本聡の語るTPP論

 朝日新聞12月9日の朝刊に「インタビュー 北の国から TPPを考える」と題する脚本家倉本聡へのインタビューが載っている。見出しが「土から離れた議論 農業を知らない東京目線の思考」となっている。
 倉本聡は1935年生まれ。まず記事のリーダーから、

 北海道・富良野を舞台に、ドラマ「北の国から」を世に送り出した脚本家の倉本聡さん(76)が、いま環太平洋経済連携協定(TPP)への参加に不安を感じているという。東京から富良野に移り住んで34年。北国で自ら土に触れてきた倉本さんが覚える不安とは何なのか。そして、いまの世界経済に感じる疑問とは。

「 」内は記者の質問に答える倉本聡の言葉。

 −−TPPの論議をどう見ますか。
 「私は経済の専門家ではないし、直感的な言い方しかできないけれど、土に触れたことがない人たちの議論が続いているように思いますね。それで大丈夫なのか不安感があります」
 −−不安感、ですか。
 「例えば、農産物でいえば環太平洋のどこかからいつでも持ってこられるという考え方でしょう。でも、本当にそうなのかなぁ。石油はどうですか。いずれ枯渇するでしょう。石油がなくなったら、輸送がものすごく打撃を受けますよね。モノをどっかから自在に持ってこられるということも、30年、40年はもたないように思います。もう少し長い目で見据えないと間違える気がしますね」
(中略)
 「農林漁業は統御できない自然を相手にするところから始まっている。工業は、すべてを統御できるという考え方に立っている。この違いはでかいですよ。統御できるもので勝負して、統御できないものは切り捨てる。そういう考え方が、TPPの最大の問題点だと思えるんです」
 −−統御できないものは、放っておけばいい。そんな考え方もあるのでは。
 「自然を征服できなければ、その土地を捨てて、次の場所へ移ればいい。それが米国流の資本主義の思考じゃないかな。でも、日本の農業は明らかに違う。土着なんです。天候が悪くて不作の年は天運だと受け止め、歯をくいしばって細い作物で生きていく。それが農業の本来の姿でしょう」
 −−農業は弱いものですか。
 「いや、生きる手立てとしては最も揺るがないものですよ。僕自身、終戦後66年の中ですごく不安感があったんです。どんどん豊かになっていく暮らしが続くわけがないっていうね。だから僕は地方に移ったし、じゃあ、地方で生きていくためにはどうやったらカネが一番かからないんだって言ったら、やっぱり自分の体を使うことですよ」

 TPPについては改めてよく考えてみたい。