岩切友里子『国芳』(岩波新書)を読む。幕末の浮世絵師歌川国芳について生涯と作品を紹介している。新書にしては「カラー版」とうたっている通りカラー図版も豊富で国芳の画業も分かりやすい。とても良い本だった。
浮世絵といえば、初期〜中期の春信や師宣、清長、北斎、歌麿、写楽、それから幕末にかけて広重、豊国、国貞(三代豊国)などが著名で、国芳も少しは知っていたが、こんな風にまとめて見たり読んだりしたことはなかった。ただ幕末でも英泉だけは好きで少し追っかけていたりもしたが。月芳あたりになると、その過剰な残虐趣味が合わなくて・・・。
国芳は歌川豊国の弟子で、豊貞(三代豊国)の弟弟子。武者絵や役者絵、美人画などを得意とし、アイディア自在の判じ絵や戯画、大胆な構図、見立てや実録など多彩な方法で高い評価を得ていた。弟子も多く、芳年、芳幾、河鍋暁斎等々多くの名前が並んでいる。鏑木清方も芳年の孫弟子にあたるという。猫好きでいつも多くの猫を飼っていて、猫を描いた絵も多い。「猫五三匹」という絵や「おぼろ月猫の盛」という猫の姿を借りた風俗絵もある。
国芳が優れた浮世絵師であることがよく分かった。さすが元リッカー美術館の学芸員で、平木浮世絵美術館の研究員だった人。国芳の展覧会があったら必ず見に行こう。
- 作者: 岩切友里子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2014/09/20
- メディア: 新書
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