原節子特集の『驟雨』を見る

 ラピュタ阿佐ヶ谷原節子特集をやっている。ここで成瀬巳喜男監督、原節子佐野周二主演の映画『驟雨』を見る。岸田國士の戯曲が原作、脚本は水木洋子。1956年公開で、この時原は36歳、佐野は44歳だった。結婚4年後の夫婦の日常を描いている。
 しかし、二人の年齢が結婚後4年という設定を裏切っている。どうみても見かけは中年の落ちついた夫婦にしか見えない。すでに夫婦は倦怠期を迎えているようだ。ささいな行き違いや夫の勤務先の不況などから、多少の波風が立っている。
 しかし根本的にはいわゆるホームドラマに類するもので、テレビドラマにこそ向いているように見える。ただ画面が大きい(スタンダードタイプ)のがテレビとの大きな違いだ。クローズアップの多用もないし、当時の松が丘駅や彼らの住むアパート一帯もきちんと作られている。おそらくセットを組んでいるのだろう。
 だが先週、傑作映画『さらば、わが愛/覇王別姫』を見たばかりの身としては、何とも気の抜けたドラマを見せられている印象が強かった。成瀬ってこれ以外見ていない気がするし、とくに代表作にも数えられていないようだから、これ1作で成瀬を評価するのは酷だろうが。わが金井美恵子は成瀬を高く評価しているし、フランス映画界の評価も小津、溝口、黒澤に次いで成瀬を挙げているそうだ。
 ラピュタ阿佐ヶ谷阿佐ヶ谷駅からすぐ、客席数40と少しの小さな映画館。初めて入ったけれど印象は悪くなかった。昔あった阿佐ヶ谷オデオン座がスポーツクラブに代わり、その裏手のビルに作られている。現在朝10時半から1回上映の原節子特集と、その後に上演される加東大介特集が行われている。


ラピュタ阿佐ヶ谷
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