田原総一朗+藤井聡『こうすれば絶対よくなる! 日本経済』を読む

 田原総一朗藤井聡『こうすれば絶対よくなる! 日本経済』(アスコム)を読む。雑誌『ちくま』に斎藤美奈子が紹介していた(2021年12月号)。しかし、藤井は安倍政権の元内閣官房参与MMT(Modern Monetary Theory=現代貨幣理論)を信奉している。MMTでは国の借金はどんなに増やしても問題ないとする。斎藤美奈子の紹介を引用してみる。

 

 最初に、田原総一朗藤井聡の対談『こうすれば絶対よくなる!日本経済』を読んでみたい。21年4月刊。新型コロナウイルスの影響で経済の悪化が顕在化した頃の本である。コロナ不況下で藤井が提言する経済政策は四つあるが、特に重要なのは①「プライマリーバランス規律の撤廃」と、②「消費税0%」の二つだろう。

 まず、プライマリーバランス(国の財政収支)について。プライマリーバランスが黒字なら健全財政、借金(国債)頼みの赤字財政は不健全だと私たちは叩き込まれてきた。日本の収支は赤字続きで、いまや「国の借金」は1200兆円、この累積赤字を減らさなければ日本は財政破綻するという話も耳タコである。

 しかし藤井は、その「常識」こそが諸悪の根源だという。〈たしかに、家計の借金ならば、ゼロにしなければいけません〉。〈ところが、政府の借金というのは、年々増えていくものなんです〉。

 日米英の債務残高を示すグラフをみれば、近代国家の成立期(17~19世紀)から今日まで、三国とも借金の累積額は右肩上がりで増え続けている。つまり財政赤字が増えるのは「正常な状態」であって、実際、プライマリーバランスを恒常的に黒字にしようとした国はどこにもないし、それで破綻した国もない。

 なぜかといえば〈日米英が国家だから、政府だからです〉。〈政府がカネを作り出して供給できる機能を持っているからです〉。

(中略)

 消費税についてはどうか。〈日本のデフレをここまで深刻化させたのは“消費税の増税”です〉と藤井は断言する。

 日本経済が長い低迷期に入ったのは1997年、バブル崩壊で経済が縮小しているなかで、橋本龍太郎内閣が消費税を3%から5%に上げたのが原因だった。もしこれがなかったら、平均年収(現在は450~500万円)は1000万円前後に到達し、格差や貧困もここまでひどくはならなかったはずだ、と藤井はいう。だが安倍政権は消費税を14年4月には5→8%に、19年10月には8→10%に上げ、そのたびに消費は冷え込み、実質賃金は著しく下落した。だから〈大至急、消費税増税の凍結、つまり「消費税0%」を実現すべきだ、と申し上げています〉。

 藤井は12年から6年間、安倍晋三内閣の参与だった人である。消費増税に反対して参与は辞めたが、与野党のリーダーにレクを続けた結果、安倍も麻生も菅も石破も岸田も、野党では小沢一郎も反緊縮を理解し、〈藤井君のいう財政政策が必要だ。MMTでいいと思う〉という政治家が増えたという。ではなぜ、それが実行に移されないのか。邪魔しているのは誰なのか。

〈諸悪の根源は財務省?〉(田原)。〈そうです〉(藤井)。

財務省問題が、じつは日本という国の宿痾となってしまっています〉。さらにここに主流派経済学者や朝日新聞などのマスメディアが乗っかる。彼ら財政再建論者は〈「破綻する。破綻する」と叫んで財政を緊縮させ、景気をますます悪化させ、その結果、税収が減って財政を悪化させてしまっている〉。

 

 齋藤に勧められて読んでみたが、かなり説得された。MMTの正しさまでは了解したわけではなかったが、現在はプライマリーバランス(国の財政収支)に囚われることなく大型投資が必要だということ、消費税ゼロ政策を採用することの重要性は納得できた。

 本書は2021年4月に発行されている。もう1年前になる。もっと議論されてもいいのじゃないだろうか。