ギャラリーαMの風間サチコ展「東京計画2019」を見る

 東京東神田のギャラリーαMで風間サチコ展「東京計画2019」が開かれている(7月13日まで)。風間は1972年東京生まれ、1996年武蔵野美術学園版画研究科を修了している。1998年にギャラリー山口で初個展、その後、ギャラリー手、マキイマサルファインアーツなどで個展を開いているが、最近は無人島プロダクションでの発表が中心になっている。「DOMANI・明日展」に選ばれ、横浜トリエンナーレにも参加している。
 今回のキュレーター藪前知子が書いているテキストを一部引く。

 

 本展の中心をなす《ディスリンピック2680〉(2018)は、皇紀2680年、優生思想で統制された近未来都市ディスリンピアで開催された架空のオリンピックのオープニング・セレモニーを描いたものである。現実世界において、皇紀2600年、つまり1940年に幻の東京オリンピックが計画されていたことはよく知られている。同じ年、総力戦体制が強まる中で、「悪質な遺伝子疾患を持つ者」を断種する優生保護法が制定される。この作品は、生命を維持する究極の「計画」とも言えるこの経緯を子細に調査し、優秀な精神と肉体を顕彰するオリンピック、国民を選別する徴兵制度などを繋げて着想された。祝砲として太陽に打ち込まれる最優秀遺伝子「日出鶴丸」の肉体、国に奉仕するべく入場行進する「甲」の青年たちや人柱となる「丙丁戊」の人々…。全体の構成美と、細部における個の悲劇との鋭い対照が描き出される。

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「ディスリンピック2680」

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「バベル」

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「点景H.L.(新宿中央公園)」

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「風雲13号地(下絵)」


 皇紀2680年といえば西暦2020年のことではないか。
 風間は作品に深い社会批判を持たせ、しかもその作品が造形的に見事なのだ。その仕事を大きな木版画という技法で表現している。作品は大きく、その社会批判の鋭さが見る者を圧倒する。デパートの企画展で3億円売り上げたと言っている下品なパフォーマンスを賛美している人たちには無縁の世界かもしれないが。
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風間サチコ展「東京計画2019」
2019年6月1日(土)-7月13日(土)
11:00-19:00(日月祝日休廊)
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ギャラリーαM
東京都千代田区東神田1-2-11アガタ竹澤ビルB1F
電話03-5829-9109
https://gallery-alpham.com/