伊沢正名『うんこになって考える』を読む

 伊沢正名『うんこになって考える』(農文協=農村漁村文化協会)を読む。副題が「いのちを還す野糞と土葬の実践哲学」で、伊沢自身の野糞の実践と、死んだあとは土葬で葬られることを希望している書。

 伊沢正名はきのこの写真家として第一人者だった。さらに粘菌(変形菌)の写真家としてもその道の開拓者だった。私も前職で伊沢に頼んで『きのこ博士入門』を作ってもらったことがある。

 伊沢がきのこの写真を撮り始めたのも自然保護運動に共感していたことによる。きのこは植物や動物の死骸を分解して自然に返す機能がある。ある時伊沢は水洗便所で排便するとそれが汚水処理場へ流れ、沈殿槽で水分と固形分の汚泥に分離され、汚泥は焼却されてセメントの原料にされてしまう。そこでは焼却したりと多くの資源エネルギーが費やされる。

 伊沢はトイレで排便することをやめて、野山で野糞しようと決心する。伊沢の住んでいるところは近所に野山があり、毎日そこで排便をして埋めていた。その場所に木を組んで×を作り、×が腐って無くなれば大便も分解されて無くなっているはずだった。ところが、もう分解されてないはずのところを掘ったら尻を拭いた紙が出てきた。紙はなかなか分解しなのだ。

 伊沢は排便のあと紙を使うのをやめる。木の葉を使い、その後水で濡らした指できれいにする。排便は必ず山で野糞をするが、出張したときなどもホテルの庭や公園などで野糞をしていた。

 さらに自宅近くの山林を購入し、プープランドと名付けて積極的に野糞をすると、土壌が菌で活性化して豊かになった。見学者たちにもここで排便をすることを勧めている。

 そして、ついに自分の死後、ここに土葬されることを計画している。排便を土に還すのも、土葬で遺体を土に還すのも同じ思想なのだ。

 野糞の実践がつづられ、その思想が語られている。なるほど、大便に対する見方がひっくり返された。