ギャラリーαMの高柳恵里展を見る

 東京東神田のギャラリーαMで高柳恵里展「比較、区別、類似点」が開かれている(6月10日まで)。高柳は神奈川県生まれ。1988年に多摩美術大学大学院美術研究科を修了し、1990−1991年イタリア政府給費留学生としてミラノ国立美術学院に留学している。現在多摩美術大学教授。先月表参道のギャラリーMUSEE Fでも個展を行ったばかりだ。

 ギャラリーには高柳特有の変な作品が展示されている。ほとんどが日常で見かける物体だ。切り取られた樹木の枝と剪定鋏、剪定鋏の写真、戸棚の棚板、机と椅子、ハンカチ、2リットル入りのペットボトル(サントリー天然水)、ポリシートに泥、カーペットにポリシート、床材の見本。

棚板

ハンカチ

ペットボトル

ポリシートに泥

カーペットにポリシート、泥

床材の見本


 こんなものが作品なのか、という驚き。いつもながら高柳は何を狙っているのだろう。床材の見本とかペットボトルとか、ほかのものも、作品が本来まとっているオーラがない。それらは他の同じようなものと取替え可能なものばかりだ。作品は本来取替えのきかない唯一のもので神々しいオーラをまとっている。そのオーラが全くない。

 高柳は作品からオーラを剥奪しているのだろうか。デュシャンのレディ・メードをもっと徹底して・・・。

 先月のMUSEE Fでの個展の折りのホームページに掲載された言葉を再度引く。

 

「日常生活における物に向き合い、そのありように加える操作とも呼びがたい微細な作用によって作品を制作し続けている髙柳恵里」。

 

現代美術をリードし続け確かな地位を固めた髙柳。その作品と向き合う時、はじめは戸惑いを感じるのにしばらく対峙する事で見えてくるものがある。作家髙柳の感覚や感情が作品に移入されていることに気づかされる。その腑に落ちるような感覚こそが美術鑑賞の醍醐味であるかもしれない。日常にある品々の美しさ、ひいては日常の自分自身のものの見方そのものの再発見ともなるであろう。

 

 高柳の展示はいつも難しい。

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高柳恵里展「比較、区別、類似点」

2022年4月16日(土)―6月10日(金)

12:30-19:00(日月祝日休廊)

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ギャラリーαM

東京都千代田区東神田1-2-11アガタ竹澤ビルB1F

電話03-5829-9109

https://gallery-alpham.com/