表参道のMUSEE Fの高柳恵里展を見る

 東京表参道のギャラリーMUSEE Fで高柳恵里展が開かれている(3月19日まで)。高柳は1962年神奈川県生まれ。1988年に多摩美術大学大学院美術研究科を修了し、1990−1991年イタリア政府給費留学生としてミラノ国立美術学院に留学している。現在多摩美術大学教授。ここでの個展は美術評論家の故鷹見明彦が企画して以来3回目。

 ギャラリーのホームページに高柳についての短い紹介がある。

 

「日常生活における物に向き合い、そのありように加える操作とも呼びがたい微細な作用によって作品を制作し続けている髙柳恵里」。

現代美術をリードし続け確かな地位を固めた髙柳。その作品と向き合う時、はじめは戸惑いを感じるのにしばらく対峙する事で見えてくるものがある。作家髙柳の感覚や感情が作品に移入されていることに気づかされる。その腑に落ちるような感覚こそが美術鑑賞の醍醐味であるかもしれない。日常にある品々の美しさ、ひいては日常の自分自身のものの見方そのものの再発見ともなるであろう。


 

 高柳については、3年ほど前、六本木のミッドタウン ガレリア3階にあるインテリアショップTIME & STYLE MIDTOWNで高柳恵里「自明」を見た。広い店内のあちこちに、商品に混じって高柳の「作品」が展示されていた。それは園芸用の黒土であったり、古い靴であったり、空のガラスのコップなどだった。三脚にセットされたカメラや、台車などもあった。

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 今回は木の小さなテーブルというか台の上にペットボトルが並べられている。サントリーの天然水の2リットル入りが12本、同じく天然水500ミリリットル入りが24本、メーカーがわからない100ミリリットル入り?が6本、整然と並べられている。

 そのほか壁に額装された写真が1点、これには木の盆に白い四角な器と盃が写っている。入り口近くの壁には高柳が書いたと思われるテキストが貼られている。

 そこに書かれた言葉。

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プレキャスト工法

量産されていて手に入れやすく、自由度はないけれど合理的。それを用いてすぐ建造できる。

高柳恵里

(2020年 スタジオT.M Concrete work展より)

 

「PL工法」

「プレハブ」

「彫刻のように」

「かのような」

 

 プレキャスト工法については、Wikipediaに「建築手法の一つで(中略)事前に成形されたコンクリート部材(プレキャストコンクリート)を工場生産しておき、その部材を建設現場に運び込んでつなぎ合わせる工法」と説明されている。

 高柳の市販のペットボトルを並べて彫刻作品とする手法と通底しているようだ。

 記憶に残っているのは、移転前の京橋にあった頃の藍画廊で、ギャラリーの隅にバケツに入れた花束を展示していた個展だ。いずれも作家が工作したのではない出来合いの物(レディメイド)を作品として展示するという手法だ。

 思えば東京都現代美術館の1999年のMOT アニュアル「ひそやかなラディカリズム」でも籐の家具の部品や、紙袋、丸めたハンカチや雑巾を作品として展示していた。おそらく高柳こそ現代美術の先端を行く過激な作家なのだろう。

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高柳恵里展

2022年3月14日(月)―3月19日(土)

12:00-19:00(最終日17:00まで)

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MUSEE F

東京都渋谷区神宮前4-17-3 アーク・アトリウムB03

電話03-5775-2469

http://www.omotesando-garo.com/museef/MF.html