ギャラリーαMの飯嶋桃代展を見る

 ギャラリーαMで飯嶋桃代展が開かれている(6月21日まで)。飯嶋は1982年、神奈川県生まれ。2006年に女子美術大学美術学科立体アート専攻を卒業。2008年に同大学大学院修士課程美術専攻立体芸術研究領域を修了し、2011年に同大学大学院博士後期課程美術専攻立体芸術研究分野を修了している。
 2006年に銀座のpepper's galleryで初個展、以後ギャルリー東京ユマニテ、銀座gallery女子美、マキイマサルファインアーツ、コバヤシ画廊などで個展を開いている。
 飯嶋はコンセプチュアルな立体作品を作っている。今回も蜜蝋で作った家型の立体、無数とも言えるボタンを使った作品、毛皮のコートを作り直した作品などが並べられている。画廊で配られた資料に飯嶋が書いている。

(……)数え切れないほど大量に集まったボタンたちは、このふたつの意味(=視覚と嗅覚にかかわる意味)において、一斉ににおいたつ。色とりどりににおいたつボタン、それらが発する湿気のようなにおい。わたしの眼と鼻を捉えるそのにおいは過去の方からやってくる。ボタンは集合的な記憶としてにおいたつのだ。においにいざなわれて、それらのボタンが縫い付けられていた服、それを着ていたひとびと、そのひとたちが属していたさまざまな家族へと想いはいざなわれる。その想いは自分の家族のうえにも及ぶ。
(中略)
わたしの制作のモティヴェイションは、わたし自身の家族と家族一般とのあいだに広がる空間−−家族の個別性でも家族一般でもないあいまいな場−−に宿る。そこでは、家族にまつわるごく個人的な記憶が、いつも、まるで炭酸水のように泡立っている。その小さな泡たちは、家族一般という水面に達するところで次々とはじけて消えてゆく。記憶の泡たちがはじけて消えるまでの時間のなかで、わたしは、わたしの制作をつづけている。
ボタンは、このようにして泡立ちながら、わたしを制作にかりたてる。しかし、これはボタンだけのことではない。わたしの蒐めたモノたち−−古着や古食器も、同じように、わたしを泡立ちのなかへと巻き込まずにはいない。

 蜜蝋で作られた立体作品には古着や古食器などが塗り込められている。この家型の立体はずっと小さなものだったが、あたかも原型のように初個展のpepper's galleryでも見られたのだった。


 そしてボタンと布の作品はギャルリー東京ユマニテで展示されていた。
ギャルリー東京ユマニテの飯嶋桃代展が興味深い(2013年7月30日)



 ついで毛皮のコートをフェイクファーに作り替えた作品が展示されている。これはコバヤシ画廊で発表したものだ。
コバヤシ画廊の飯嶋桃代展が興味深い(2013年10月30日)

 ソ連の詩人エフトシェンコに倣って言えば、本展は飯嶋桃代の「早すぎる回顧展」ともいえるかもしれない。
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飯嶋桃代展
2014年5月24日(土)−6月21日(土)
11:00−19:00(日曜・月曜・祝日休み)
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ギャラリーαM
東京都千代田区東神田1-2-11 アガタ竹澤ビルB1F
電話03-5829-9109
http://www.musabi.ac.jp/gallery/