東京墨田区江東橋の無人島プロダクションで風間サチコ展「セメントセメタリー」が開かれている(11月20日まで)。風間は1972年東京生まれ、1996年武蔵野美術学園版画研究科を修了している。1998年にギャラリー山口で初個展、その後、ギャラリー手、マキイマサルファインアーツなどで個展を開いているが、最近は無人島プロダクションでの発表が中心になっている。風間は去年の高島屋のタカシマヤ文化基金を小泉明郎らとともに受賞し、今年は東京都現代美術館で個展が開かれた。いま絶好調の作家だ。
画廊のホームページより、
本展は、風間が2018年に発表した幅6mを超える巨大木版画作品《ディスリンピック2680》から派生した作品による展覧会です。
展覧会のメイン作品となる《ディスリンピアン九軍神》で風間は、国の威信をかけ鍛え上げられた架空のアスリート9名を描いています。
九軍神とは、太平洋戦争開戦時のハワイ海戦(真珠湾攻撃)に参加し未帰還となった特攻隊隊員9名に与えられた称号として知られています。
銀箔に見立てられた薄いアルミに描かれた9人の戦士『ディスリンピアン九軍神』も、架空の都市主催のスポーツ大会・ディスリンピックに出場し、金メダル獲得の特命を国から託されたスーパー・アスリートたちです。
9軍神のうちの3点は《ディスリンピック2680》発表直後の2018年に制作されましたが、6点は今年のオリンピック/パラリンピック時期をはさんで制作されました。
「9秒台、もしくは死か…」そんな決死の覚悟で100M走に挑む〈両毛超特急〉をはじめ、体操の〈日出鶴丸〉、飛込みの〈不死山トビ子〉、水泳の〈海原回天〉、そして貴族でフェンシング選手の〈一突男爵〉など、選手の名前にもアスリートたちの覚悟の物語が込められています。
九軍神と呼ばれ、国の威信を背負わされた選手たちは、競技の結果次第で神のように崇められたり、生贄のようになぶりものにされます。
いくら頑張っても「金」にはなれない、薄いアルミに描かれた偶像たちの未来はあるのか、という想像の余地を残して描かれたアスリートたちの肖像。
個人の能力や自分の目標だけでなく国までを背負うということの重さと悲喜こもごもを、一見ユーモラスに描かれた選手たちから感じてもらえたらと思います。
また本展では、ディスリンピアン9選手とともに、鍛錬→成功の精神論を人間ピラミッドで表現したアルミ箔襖絵『人間富嶽』(2017年)も展示します。
上の作品について
九軍神の中で唯一金色を使用した貴賓。
襞襟をあしらった西洋甲冑にティアドロップ、70年代風のヘアスタイルがイカしたこの貴族は〈Baron von BOTTE〉一突男爵その人である。彼は貢ぎ物のレミーマルタン・ルイ13世をバカラのグラスに注ぎ、獲物ジパングに剣を突き刺し黄金の獲得に野心を燃やす。その金の夢は天鵞絨のカーテンに綴られたアラベスクに浮かび上がっている(わかるかな?)
(風間のブログより)
風間は力強い造形力を持ち、また鋭い社会批判精神も併せ持っている。初個展から20年以上続く制作は一切ぶれることがない。
・
風間サチコ展「ディスリンピアン 2021」
2021年10月30日(土)―11月20日(土)
13:00-19:00(土日は12:00-18:00)月曜祝日休廊
・
東京都墨田区江東橋5-10-5
電話03-6458-8225