近藤譲『ものがたり西洋音楽史』(岩波ジュニア新書)を読む。優れた西洋音楽通史であって、ジュニアだけに読ませるのはもったいない。近藤は現代音楽の作曲家であり、実にていねいに各時代の音楽を語ってくれる。
とても興味深く読んだと言いたいところだが、最初の2章は中世とルネサンスの音楽で、作曲家の名前もほとんど聞いたことがなく、いわんや音楽そのものも馴染みがない。ここまでが本書の3分の1を占める。
3章がバロック、4章が3つに分かれていて、古典派、ロマン派、モダニズムとなっている。よく知っている作曲家が登場し、彼らが近藤の手によってきちんと体系づけられる。もっとも近藤は本書について、客観的で普遍的な唯一の正しい「歴史」などはなく、現代のひとつの見方からつづられた「音楽の歴史」だと言い、タイトルに『ものがたり~』と付けている。
古典派、ロマン派については多少の知識があったが、それらを詳しく分類し整理してくれている。しかし最も興味深かったのは、20世紀のモダニズムの章で、プリペアド・ピアノを創始したジョン・ケージが助手をしていたヘンリー・カウエルが、最初にピアノの弦を直接指ではじいたり。手でこすったり、弦の上に金属の皿を置いて鍵盤を弾くという技法を始めたのだという。ケージの発明ではなかったのか! そのほか、セリー音楽や偶然性の音楽、図形楽譜についても整理して紹介してくれている。
ヨーロッパのクセナキスやリゲティ、ペンデレツキ、シェルシ、カーゲルなどの登場が語られ、アメリカのテリー・ライリーやスティーヴ・ライヒのミニマル音楽が紹介される。最後にソ連のショスタコーヴィチが登場して終わりとなる。
あとがきで、この物語を1970年代半ばで閉じると言っている。それ以後のことはあまりに最近のことでありすぎると。それ以後も読みたい。