高山なおみ『諸国空想料理店』を読む

 高山なおみ『諸国空想料理店』(筑摩書房)を読む。吉祥寺にあったエスニック料理の店Kuu Kuu(クウクウ)のシェフだった高山が店で出す料理のレシピとそれにまつわるエピソードを書いている。文章が生き生きしていて、料理も半端なく美味しそう。
 初めてペルーに行ったとき、強烈なにおいにすっかりやられてしまう。あれは何だろういったい。帰国して友達にペルーのことを何度も何度も話した。そのうちに記憶が擦り切れてどんどん薄らぎ、わすれてしまいそうになる。そのうちに、私、ペルーに行ってないのかもしれないとまで思うようになってしまった。

 そんなある日、その頃私の職場だった中野の小さなレストランで料理を作った。/ペルー料理の「アロス・ペルデ」。/ほうれん草と、オレガノ、それに大量のコリアンダーを炊き込んだ緑色のごはん。/炊飯器にセットしておいて、ごはんに添える鶏肉を買いに出かけた。/帰ってから、ごはんの味見をしようと釜の蓋を開けた途端、グワーッとすごいフラッシュバックに襲われた。/ペルーの記憶の大津波である。/一瞬の間に大急ぎで旅行の記憶が体のなかを一周し、そして日本に帰って来て、で、ここで私は釜の蓋を開けていた。/それは紛れもなくコリアンダーオレガノの混ざり合ったにおいの仕わざだった。

 で、そのレシピの一例が、アフリカ大餃子、ネパールのチベタンモモ、インドのチキンビリヤーニ、ベトナム生春巻きのゴイクォン、野菜丸のままシチュー、トマト丸ごとピクルス、ベトナム風汁スパゲティ、などなど。
 エスニック料理だからけっこうスパイスの種類も多い。でも中には私でも作れそうなものもある。一度挑戦してみようかな。

 

 

 

諸国空想料理店 (ちくま文庫)

諸国空想料理店 (ちくま文庫)