東京代々木上原のギャラリーYORIで及川伸二展「ちょっとしたこと」が開かれている(12月25日まで)。及川伸二は抽象画家の及川伸一の弟ということだ。兄と違って人物画を描いている。しかし兄弟なら影響を受けざるを得ないだろう。空間のつくり方とか画面の中の形態など兄の影響が顕著にみられる。池田龍雄・忠利兄弟もやはり共通点があったのを思い出す。
明らかに草間彌生をモデルにした作品が展示されていた。草間の特徴をよく捉えていて面白かった。具象ということもあって、兄よりもはるかに取っ付きやすいかもしれない。
中に緑色の洋服を着た人物作品があった。及川にこれは画家の野澤義宣がモデルかと尋ねたら全く違うとのことだった。そして野澤さんは頭がないじゃんと言う。野澤は抽象と具象を同時期に描いて発表している画家だ。あるとき、空中に頭だけが浮かんでいる絵を発表したことがある。谷中墓地の近くに住んでいたとき、夜墓地の空間に頭だけが浮かんでいるのを見たことがあって、それを描いたという。普通の人だが、ちょっと超常現象を体験してもいるという。そんな野澤を知っているから、及川が野澤さんには頭がないと言ったのが、首無し人間に思えて少し受けた。否定はされたけど野澤の雰囲気が出ていると思うのだけど。及川の言う頭がないとは頭髪のことだった。
抽象の兄の絵に比べて弟の人物画は決して引けを取らない優れた作品だと思う。今度は兄弟二人展を見てみたいと思うのだが。
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及川伸二展「ちょっとしたこと」
2021年12月11日(土)―12月25日(土)
11:0017:30(月曜日休廊)
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ギャラリーYORI
東京都渋谷区上原3-25-2
電話03-3467-3933