山本弘の作品解説(29)デッサン2点「鳥」と「自画像」



 山本弘のデッサン2点。「鳥」と「自画像」。鳥は1966年、自画像は1970年に描かれた模様。いずれも一時期所属し、後に除名された飯田市リアリズム美術家集団の機関誌「リア美」に掲載された。
 この頃すでに山本は脳血栓を患ったあとで、手足も口も不自由だった。その自由のきかない手で殴りつけるように描いていた。
 鳥のモチーフはその後F30号の油彩「黒い鳥」として完成される。それは日本アンデパンダン展に出品されたあと、山本の住む上郷村の村長室に寄贈された。その時の新聞記事の切り抜きが残っている。上郷村は上郷町になり、そして飯田市に合併されて、「黒い鳥」の行方は分からなくなった。
 山本未亡人がリア美の幹部に尋ねたときにちょうど私も居合わせた。弘さんはどうしてリア美を除名されたんな? 会費を払わなかったんだら。いや、態度が悪かったからだに。語尾の「だら」は推量の「だらむ」の、「〜だに」は断定の「なり」の訛ったものだ。