山本弘の作品解説(33)「題不詳(土蔵)」


 山本弘「題不詳(土蔵)」油彩、F4号(33cm×24cm)
 池田憲寿コレクションの一つ。制作年不明。右下に「Hirossi」のサインがあり、画風からみて先に紹介した(雪景色)同様60年代後半の作品だろう。晩年には「弘」また時に「ヒロシ」と署名していたから。
 近くで見ると何が描かれているか分からないが、離れてみればすぐ土蔵だと分かる。当時、飯田市や周辺町村にはこんな古い土蔵があちこちに見られたものだった。ちょっと縦長にデフォルメされていてエル・グレコを連想する。土蔵であり自画像なのだろう。一見薄汚く見えるのに実は美しいという山本の自恃であり、ナルシシズムと言ったら言い過ぎだろうか。山本も瀬戸内寂聴描く湯浅芳子のように孤高の人なのだ。


瀬戸内寂聴「孤高の人」は湯浅芳子の優れた伝記文学だ