クレオール言語(クレオールげんご)とは、意思疎通ができない異なる言語の商人らなどの間で自然に作り上げられた言語(ピジン言語)が、その話者達の子供によって母語として話されるようになった言語を指す。公用語や共通語として話されている地域・国もある。
ピジン言語では文法の発達が不十分で発音・語彙も個人差が大きく複雑な意思疎通が不可能なのに対し、クレオール言語の段階ではそれらの要素が発達・統一され、複雑な意思疎通が可能になる。クレオールはピジンと違い精緻で完成された言語であり、他の自然言語に引けをとることは無い。
このクレオール語の具体的な例が、千野栄一「ことばの樹海」(青土社)に紹介されていた。面白かったので、ここに挙げよう。
面白いのはピジン英語から発達してきたクレオル語の一つであるトク・ピシンで、一人称の人称代名詞には単数のほか、二人を示す双数と複数にそれぞれ包括形と除外形がある。すなわち、mi(私)、yumitupela(私とあなた二人〈you me two fellow)、mitupela(あなたを含まない私たち二人〈me two fellow)、yumi-pela(あなたを含む私たち〈you me fellow)、mipela(あなたを含まない私たち〈me fellow)である。
この包括形と除外形というのは、「ことばの樹海」によれば、
……複数の言語学者や民族学者に取り上げられているのは、人称代名詞の一人称の複数に聞き手を含むか含まないかで二つの形式を持つことである。これは金田一京助がアイヌ語の調査に行ったとき、よく理解できなかったのをインフォーマントの方から説明された話が出ているが、「われわれ」というとき、相手までを含めれば「包括的」、含まなければ「除外的」という区別である。
この「インフォーマント」も、Wikipediaによれば、
インフォーマント(Informant、あるいはInformer)とは、文化人類学、人類学や言語学のフィールド調査などで研究者にデータを提供する人。情報提供者。 たとえば方言学者にとっての方言話者など。
ちなみに、地震があったハイチの言語は、まさにこのフランス語系のクレオール語だ。公用語がクレオール語だということと、地震の被害が大きかったことは無関係ではなかったのではないか。
さて、クレオール語については、田中克彦に「クレオール語と日本語」(岩波書店)という分かりやすい良書があり、私も紹介したことがある。
・日本語のピジンイングリッシュ化を危惧する(2008年1月13日)
- 作者: 千野栄一
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 1999/04
- メディア: 単行本
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