ギャラリー檜の森岡純写真展が興味深い


 東京京橋のギャラリー檜プラスで森岡純写真展が開かれている(5月3日まで)。森岡は1949年島根県隠岐島生まれ、もう20年以上ギャラリー檜で個展を続けている。
 森岡はいつも日常的な風景を撮っている。人物が登場することはない。街の一角や道路、看板や建物など。だがそれらを中心にすることはない。主題にすることはない。森岡の風景写真は何かずれているように感じられる。構図も何か外しているような印象がある。
 以前書いたことを再録する。
 森岡の写真には普通どんな写真にもあるメッセージがないのだ。写真はふつう報道の写真を典型として、メッセージを持っている。風景写真でも、きれいな風景を見せたいとか、絵画的なそれとか、仰天する自然を見せるとか、写真が何か伝えるべきものを志向している。ポートレートやヌードだってそれは変わらない。ところが森岡の写真にはメッセージがないのだ。
 メッセージがないからといって、写真がつまらないわけではない。そこには不思議な存在感があるのだ。このような写真家は他にいないだろう。渡辺兼人の写真だって、無人の街角に意味があるのだから。
 森岡は風景写真を撮っているのではない。実は森岡は「もの派」の作家たちの作品を撮影することから写真のキャリアを重ねてきた。その過程で「もの派」から大きな影響を受けてきた。森岡の写真が誰とも似ていない独自のものであるのはそのためだ。「もの派」は土、石、木などの素材にほとんど手を加えないインスタレーション制作を中心に展開された。森岡の写真は、ある種何でもない場所を被写体に選んでいる。その何でもない場所が、選ばれた特権的な場所に変貌した一瞬を捉えているのだ。




 今まで森岡はロール紙を使った大きな白黒写真を発表してきた。それが今回はカラー写真になっている。もうバライタ紙の大きな印画紙が手に入らなくなったためだという。
 日本で唯一の、写真で現代美術を制作している特異な作家、森岡純の個展を見てほしい。
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森岡 純 写真展
2014年4月28日(月)−5月3日(土)
11:30−19:00(最終日17:00まで)
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ギャラリー檜plus
東京都中央区京橋3-9-2 プラザ京橋ビル3階
電話03-6228-6558
http://www2.ocn.ne.jp/~g-hinoki