ギャラリイKの福井拓洋展「CLOUD 9」に驚かされる

 東京京橋のギャラリイKで福井拓洋展「CLOUD 9」が開かれている(4月26日まで)。福井は1986年静岡県生まれ、2010年に多摩美術大学彫刻学科を卒業し、2012年に同大学大学院美術研究科博士前期課程を修了している。
 2011年にギャラリイKで「多摩美術大学大学院彫刻専攻選抜展プロジェクト」として初個展、また2013年にもこのギャラリイKで個展を開いて今回が3回目となる。
 2011年の個展では「脚の生えた丸」と題した高さ2mを越える球形の木の立体を展示した。板状の木をたわめて弓型にしたものを上下で押さえ、球形の立体を作った。イサム・ノグチが紙で作った丸い照明器具の内側の骨のような形だ。
 昨年の個展では意味ありげな器械を展示した。工場のロボットのような立体で、自動車工場の映像などで見られるロボットアームがバケツのような丸い容器に何か工作しているように見えた。しかし、何ら実用的な機能は持っていないと説明された。
 そして今回の個展を見て驚いた。





 ギャラリイKはビルの4階にあり、エレベーターを降りると小さなスペースがあって、そこのドアを開けるとギャラリーの空間が広がっている。エレベーターを降りたところからギャラリーの内部まで、そのまま床が続いている。ところが今回はギャラリーの入口に階段ができていた! その高さが40cm以上。だから階段を登ってギャラリーに入ると天井が低い! ギャラリーの右の壁から数本のパイプ状のものが伸びていて、パイプの口の下に溝が作られている。排水口みたいな形だ。溝は両端の壁の中に消えている。排水パイプと排水用の溝といった趣向だ。
 よく見ると、溝を壁の中に通すために、本来ある壁を太らせている。壁の幅が広がっているのだ。福井はギャラリー内に溝を作るために床を持ち上げ、自然な形で溝が壁に通っているように見せるために両脇の壁まで増築している。実用的な意味は全くないのに。
 ギャラリイKのHPに解説が掲載されていた。

福井拓洋の造形の美しさは「用」の美です。しかしその「用」は何ら目的も実用性も持たないのですから、私たちの日常や現実生活を成り立たせている「実用」に対して「虚用」とでも言うべきものです。現実社会における様々なデザインとパラレルに、非現実世界の「虚のデザイン」を展開することにより、福井はものをかたちづくるという人間の行為の性格を抽出し、私たちの社会に溢れるものの「形」とは何か、「美」とは何かを問いかけているように思われます。そして今回の展示「CLOUD 9」は、ものの「形」や「機能」と同時に、それが存在している「場所」についても、虚と実を交錯させる試みとなっています。(ギャラリイK)

「虚と実を交錯させる試み」なのだとは分かっても、ギャラリーを改築するなんて、まったく作家というものは面白いことを考えるものだ。
       ・
福井拓洋展「CLOUD 9」
2014年4月14日(月)−4月26日(土)
11:30−19:00(土曜日は17:00まで)日曜休廊
       ・
ギャラリイK
東京都中央区京橋3-9-7 京橋ポイントビル4階
電話03-3563-4578
http://homepage3.nifty.com/galleryk