群ようこの猫に関するエッセイ、『トラちゃん』(集英社文庫)と『ネコの住所録』(文春文庫)を読む。前者は副題が「猫とネズミと金魚と小鳥と犬のお話」とあり、群が子どもの頃から成人するまでに飼った様々な動物に関するエピソードを綴っている。後者も同じような世界を扱っているが、雑誌『諸君!』に1989年2月号から2年間に渡って連載したものをまとめている。
誰かがおもしろいと推薦していたので2冊続けて読んでみた。小動物の飼育に関して母親が積極的で、多いときには猫6匹、小鳥数羽、モルモット数匹に大きな金魚まで飼っていた。それもアパート住まいの身で! そんな状況での動物たちとのちょっと外れたやり取りが書かれており、そのエピソードがおもしろい。
と書きながら、読書中ときどきイライラしそうにもなった。それは文章が上手じゃないからだろう。エピソードはとてもおもしろいのに、それを十分生かした文章になっていない。時系列も素直に進んでいくばかりで、まるで子供の作文を読んでいるような気分だった。いや、子供の作文と書きながら、そんなに幼稚な文章ではない。下手ではない。人気エッセイストらしいので、当然水準は超えている。でも素朴なのだ。
猫に関する見事なエッセイというと、金井美恵子や早坂暁や川崎徹を思い出す。まあ、彼らに比べたら分が悪いのは仕方ないかもしれない。
・村松友視「アブサン物語」を読む、その他早坂暁の名文(2008年2月27日)
・早坂暁「公園通りの猫たち」を読んで(2009年5月15日)
・川崎徹の名エッセイ「猫とわたし」(2008年9月10日)
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