森美術館のアンディ・ウォーホル展「永遠の15分」を見て


 森美術館アンディ・ウォーホル展「永遠の15分」が開かれている(5月6日まで)。パンフレットに「ミスター・ポップ・アート。国内史上最大の回顧展」と謳われている。さらに「アンディ・ウォーホルの初期から晩年までを総覧する約400点が出品!」とある。標題の由来はアンディ・ウォーホルの言葉「将来、誰でも15分は世界的な有名人になれるだろう。」から採られている。
 会場はいくつかの部屋に仕切られ、パンフレットでは「ウォーホルとセレブリティ」「一流ファッション誌『ヴォーグ』などにも掲載されたドローイング作品」「現代美術に燦然と輝くウォーホルの彫刻作品」「約25本の実験映像作品を迫力ある展示空間で上映」「天才画家ジャン=ミシェル・バスキアとのコラボレーション」「伝説のアートスタジオ、ウォーホルの「ファクトリー」を体験型空間として再現!」と仰々しく紹介されている。
 同じパンフレットに「作家の主要シリーズを網羅した本展はウォーホルを知らない人には「入門編」となります」とある。まあ「網羅」というか「総花的」な企画だ。小さく区切られた小さな部屋に作品がごちゃごちゃ並べられている。ではどれが目玉作品なのだろう。プレスリーが2人並んで拳銃を構えているシルクスクリーンだろうか。マリリン・モンローの肖像だろうか。すべてが小粒に思われた。これなら、むしろ昨年8月〜10月にかけて国立新美術館で開かれた「アメリカン・ポップ・アート展」に展示されたウォーホルの作品の方が充実していたのではないか。あちらには代表作に数えられる「200個のキャンベル・スープ缶」とかジャクリーヌやモンローの肖像画などが、コレクターであるジョン&キミコ・パワーズ夫妻によって集められていた。
 なぜ主要シリーズを「網羅」した本展がおもしろくないのか。それはウォーホルの資質によるのではないか。パワーズ夫妻が集めた代表作はそれなりに見るべきものがあった。ウォーホルが一応アメリカン・ポップ・アートの代表作家だからだ。だが、それら代表作以外には見るべきものが少ない。総花的な展示を心掛ければ代表作以外も展示しなければならず、おもしろくなくなるのは必然だろう。そしてウォーホルの代表作ですら、実はポップ・アートの本当の主流ではない。むしろラウシェンバーグジャスパー・ジョーンズリキテンシュタインの方をこそ評価するものだ。
 しかし、総じてポップ・アートよりミニマル・アート、ミニマル・アートより抽象表現主義の方が大きな成果を収めたのではなかったか。ウォーホル展を見て、何やら寒々しい印象を持ったのだった。
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アンディ・ウォーホル展「永遠の15分」
2014年2月1日(土)−5月6日(火)会期中無休
10:00−22:00(火曜日のみ17:00まで)
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森美術館
東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
ハローダイヤル03-5777-8600