ギャラリーeitoeikoの「在日・現在・美術」を見る


 神楽坂のギャラリーeitoeikoで「在日・現在・美術」が開かれている(5月17日まで)。本展は鄭裕憬(チョン・ユギョン、1991年兵庫県生まれ)を中心とした在日コリアン三世の作家5名による構成になっている。画廊主の書いたテキストを引用する。

日本で生まれ、日本で育った「外国人」という特殊なコミュニティに属するアーティストは何を考え、何を示すのでしょうか。
 主観的輪郭ということばから、インターネットに流れる北朝鮮の風景を客観的に考察していくチョン・ユギョン。ダ=ヴィンチや鴨井玲の構図をヒントに、眼に見えない感情の揺れを赤色と青色の二色にわけて描く李晶玉(リ・ジョンオク、1991年東京都生まれ)。かつて日本に渡ってきた祖父の現在の姿を現代の街並みにあわせ、それぞれの家族にそれぞれのささやかな歴史が存在することを伝える鄭梨愛(チョン・リエ、1991年神奈川県生まれ)。
 もつれた糸のように三角形をひたすらにつなげる李靖華(リ・チョンファ、1992年神奈川県生まれ)、人物を描くと「似てない」と文句をいわれるため動物をモチーフに「数独」を描く?昌輝(チョウ・チャンフィ、1992年北海道生まれ)。彼らが在日という目に見えない枠組みから美術によって獲得し、そこに託したものは、表現の自由であり、いまを生きる彼ら自身の姿ではないでしょうか。テーマを見つめて、はじめは気付かなかったことを新しく発見して伝える。その行為は、写実に学ぶ日本画のあり方にも似ています。(後略)

 5人は朝鮮大学校の研究生たちだ。しかし社会主義リアリズムとは無縁のようで、とくに違和感は感じない。鄭梨愛の描く女性像は写実絵画的でありながら画面を汚していて、安易な写実絵画への批判性がほの見える。
 画廊主から「眼に見えない感情の揺れを赤色と青色の二色にわけて描く」と紹介された李晶玉、確かな描写で不思議なイメージを示している。
 鄭裕憬の大きなドットは、北朝鮮の政治的ポスターの一部を拡大し、人型やコーラの瓶などを重ねている。

鄭梨愛

李晶玉

鄭裕憬

李靖華

?昌輝(チョウ・チャンフィ)
 在日作家とはいうものの、あまり日本人作家と異なる印象を受けない。日本で生まれ日本で生活しているから、そうなのだろうか。そのことが良いことにも思えるし、民族や価値観の違いを見たかったという気もする。先日見たSteps Galleryのセルビアの作家たちとか、今回の作家たちとか、様々な環境の作家たちの作品をもっと見てみたい。
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「在日・現在・美術」
2014年4月18日(金)−5月17日(土)
12:00−19:00(日・月・祝日休廊)
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eitoeiko
東京都新宿区矢来町32-2
電話03-6479-6923
http://eitoeiko.com/
地下鉄東西線神楽坂駅で下車し、矢来口を出て右折、神楽坂通りを早稲田方向に200mほど進み、牛込天神町の交差点にある交番の手前を左折、100mほど進むと左手に矢来公園がある。公園の角の十字路を右折すると、すぐ左手にeitoeikoの看板がある。