野見山暁治『でんでんむしのかなしみ』を読んで


 野見山暁治・絵『でんでんむしのかなしみ』(星の環会)を読んだ(見た?)。新美南吉絵童話集と題された絵本で、野見山が絵を描いている。小学校中学年〜中学生向けとある。冒頭数ページの文章を紹介する。

いっぴきの でんでんむしが
ありました。
       ・
あるひその でんでんむしは
たいへんなことにきがつきました。
「わたしは いままでうっかりして
いたけれど、わたしの せなかの 
からのなかには かなしみが 
いっぱいつまって
いるではないか」
       ・
この かなしみは
どうしたら よいでしょう。
       ・
でんでんむしは
おともだちの
でんでんむしの ところに
やって いきました。

 これに野見山が絵を付けている。その絵がとてもいい。ページ一杯にでんでんむし=カタツムリが描かれている。
 色彩もいいし、形もいい。これを見ると、野見山の本質は具象であることが分かる。抽象を描いていても、その根底には具体的な形があるのだ。その形の変奏として抽象的な作品が現れるのではないか。
 本書は「国語が楽しくなる 新美南吉絵童話集」という全3巻シリーズの1冊で、ほかには、あき びんご・絵『正坊とクロ』、山中現・絵『ついていったちょうちょう』が同時に発売されている。
 小中学生だけに読ませておくのはもったいない出来映えだ。
 書店では販売していないのかもしれない。私は銀座のギャラリー枝香庵で購入した。本体価格1,800円。