ヨシダ ナギ写真集『SURI COLLECTION』を見る

 ヨシダ ナギ写真集『SURI COLLECTION』(いろは出版)を見る。1986年生まれのヨシダがアフリカのエチオピア南西部に暮らすスリ族を単身訪ねて撮った写真集。「撮影後記」から、

スリ族が住むエリアは交通インフラが整っていない辺境の地で、首都のアディスアベバから車で片道3日間、悪路を走った場所にある。世界有数の虫大国であるエチオピアで、南京虫やダニと格闘しながら、南へ南へと進んだ。やっと彼らの住むエリアに辿り着いた時には、ダニで足がマシンガンで撃たれたような痕だらけだった。

 やっと到着してスリ族に会い撮影を依頼したが、彼らの衣装はドイツの写真家の撮影したようなものではなく地味だった。一旦帰国しあらためて出直した。資料を携えガイドもスリ族のエリア出身者に変えた。

……メイクアップが終わった彼らを目の前にした瞬間、突然自分がおとぎ話の世界に迷い込んだような錯覚に陥った。


 ヨシダはスリ族を訪ねる前にもアフリカの少数民族を撮影していた。彼らは非常にプライドが高くて気難しい。ヨシダは彼らと同じごはんを食べて同じ格好になる。ナミビアでは全身に赤土を塗り、カメルーンでは葉っぱをパンツがわりにもした。すると彼らはヨシダを友として、家族として受け入れてくれた。著者紹介の項でも「アフリカの裸族と共に裸になった」とある。撮影最終日には、滞在していたスリ族の村長から「お前はもううちの家族だから、いつでもまた来なさい」と言われた。
 着飾ったスリ族たちの年齢がよく分からない。写真説明もない。何人もの少年たちは細長い小さなちんちんをしているし、胸の小さな少女もいる。大人たちが写っていないように見える。ヨシダが加わった集合写真もあるが、ヨシダは半裸にも見えるが、見えそうな左乳首がよく見えない。自分の写真だけ修整してしまっているのだろうか。長島有里枝のデビュー写真は自分も含めて家族のヌード写真だった。スキンヘッドに大きな乳房を見せていた。ヨシダもそこまで徹底すべきではなかったか。また着飾った衣装の写真ばかりで、スリ族の日常生活が全く写っていない。先述したようにキャプションもない。名取洋之助の『写真の見方』(岩波新書)にあったように、写真はキャプションで意味が180度変ってしまう。
 大判80ページ。定価3,400円+税。個々の写真をもっと小さく扱ってでも写真点数を増やしてほしかった。「撮影後記」にはさりげなく「中学2年で学校をドロップアップした私は英語なんてまったく話せなったから〜」とある。登校拒否でもしたのだろうか。それがこんな優れた仕事をしている。ヨシダはまだ30歳未満だ。彼女だったらこれからも素晴らしい写真を見せてくれるに違いない。


SURI COLLECTION

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