『プラットフォーム』を読む

 ミシェル・ウエルベック『プラットフォーム』(河出文庫)を読む。奇妙な小説。表4(裏ページ)の惹句から、

「なぜ人生に熱くなれないのだろう?」――圧倒的な虚無を抱えた「僕」は、父の死をきっかけに参加したタイへのツアーで出会った女性と恋におちる。パリへ帰国し、ふたりは売春ツアーを企画するが……。高度資本主義下の愛と性、そして絶望を描き、イスラームの脅威を見事に予言した、最もスキャンダラスな長篇作。

 初めは面白く読んでいたが、惹句にもあるように、ふたりが売春ツアーを企画することからも性描写が頻出する。それも結構具体的で、途中から読むのがつらくなった。(自分、枯れたか)。
 東南アジア観光が主たる舞台だから、各国からの旅行客に対する辛辣な評も散見される。日本人のことはあまり話題にならないが、中国人の礼儀作法についてはコテンパンにやられている。
 全体が3章からできていて、アジアへの売春ツアーの企画がテーマだから、旅行業界の内実とかも詳しく語られる。そんなことを読むのもうっとうしい気分にさせられた。気の短い読者なら途中で読むのを止めるかもしれない。
 しかし第2章の末尾で大きな破局が現れる。第3章は30ページしかない。全体の7.5%だ。それが全体の印象をひっくり返す。最後まで読んで良かったと思う。人生に関して真摯に考察している。
 ステップス・ギャラリーのオーナーから同じ作者の『地図と領土』(ちくな文庫)を勧められ、昨年末に購入したがまだ読んでいない。これはフランスの最も権威ある文学賞であるゴンクール賞を受賞した傑作と表4の惹句にある。そろそろこれに手を付けよう。