丹羽文雄『小説作法』(講談社文芸文庫)を読む。裏表紙の惹句から、
瀬戸内寂聴、吉村昭、河野多恵子、津村節子、新田次郎ら錚々たる作家を輩出した同人誌『文学者』を主宰し、文壇の大御所として絶大な人気を博していた昭和20年代後半『文學界』に連載され、異例の反響を得た名著。……
ここに列挙された作家たちには誰にも食指が動かない。大御所の作品は若いころ何かを読んでいるはずだが、続けて読もうとは思わなかったので以来ほとんど読んでいなかった。
本書の章立ては、テーマに就いて、プロット(構成)に就いて、人物描写、描写と説明、小説の形式、リアリティに就いて、文章に就いてなどから、時間の処理や、題名、あとがき、書き出しと結び等々、実にていねいに書いている。その間実例を随所に挟んでいる。
テーマに就いての章で、自分は大きなテーマはつとめて避けている、手ごろなテーマを取り上げるように注意をしている、などと書く。斬新な独創的なテーマばかりに固執すると、小説が書けない結果になるという。「テーマはよくよく自分の柄にあった、つとめてひかえめなものと私は自分にいいきかせている。自分の手におえる範囲内で、とりあげるべきである」と書いている。
大御所の作品をWIKIPEDIAで見れば小説だけで200冊以上並んでいる。中間小説とか風俗小説とか言われたように、手近なテーマで身の回りに見られたことを書いていたから量産できたのだろう。
本書には巻末に短篇「女靴」と「媒体」が付されている。どちらも達者に書かれているものの、どうにも興味の湧かない世界だった。てか、読むのが苦痛だった。どうしてこんなものを読まなければいけないのか、と。
- 作者: 丹羽文雄
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/12/10
- メディア: 文庫
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