ギャラリーなつかの濱田富貴展を見る

 東京京橋のギャラリーなつかとクロスビューアーツで濱田富貴展「言ノ葉―Program」が開かれている(12月23日まで)。濱田は福岡県生まれ、2000年に武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻版画コースを修了している。その後、カナダのアルバータ大学やアメリカのユタ州立大学で学び、2009年には文化庁からフィンランドに派遣されている。さらに2018年はノルウェーの北極圏に滞在して制作している。

 浜田のテキストを引く。

以前レジデンスで訪れた真冬の北海道士別市で、ふと、乱立する立ち枯れた植物を真っ白で広大な雪原の中に見つけた時、何か巨大な紙に書かれた文字のように見えた。まるで地球規模の書物のような。

この世界は、我々人間が認識出来ない言葉の暗号が網の目のように張り巡らされているように思える。

プログラミング言語は、コンピューターが理解する「0と1の世界」を、人間が分かる言語の世界とつなぎ合わせるものとして存在している。

とすれば、この森羅万象と我々を繋ぎ合わせる言語は一体どれほどあるのだろう。

この世界のなりたちと自然界、過去と現在、記録と記憶、遥か古代から刻み込まれ格納されてきた膨大なDNA、それらの「言葉のかたち」を、植物の姿を借りて紙面に手繰り寄せていく。

ああ、それにしても、我々はこの世界のほんの一部しか知らずに死んでいくのだ。なんと勿体なく悔しいことか。

 

ヲシテ文字


 濱田は植物の実などをモチーフにして作品を制作してきた。一見単純な造形に思われるのだが、ギャラリーで作品に接すると濱田の作品の豊かさが実感される。見ていてとても気持ちの良い作品なのだ。

 しかし今回は変わった作品があった。何か隷書体の文字が並んでいるのかと思ったら、それは、漢字伝来以前から日本に存在していた「ヲシテ文字」という古代文字(神代文字)だという。

 古代文字が、従来濱田が描いていた植物の実とさほど違和感はない。でも新しい展開で面白かった。

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濱田富貴展「言ノ葉―Program」

2023年12月4日(月)―12月23日(土)

11:00-18:30(土曜日は17:00まで)日曜休廊

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ギャラリーなつか&クロスビューアーツ

東京都中央区京橋3-4-2 フォーチュンビル1F

電話03-6265-1889

http://gnatsuka.com/