戸田名草という画家

f:id:mmpolo:20200607214737j:plain 朝日新聞の「画壇・俳壇」のページに「うたをよむ」というコラムがある。今回(6月7日)は広渡敬雄が「森の豊かさ」という表題で書いている。広渡は宇田喜代子の句を紹介する。

 雨あとの森を背負うて蝸牛
 長野の俳人小林貴子は「宇田喜代子さん曰く」として、こう詠んだ。
 山は大きな水のかたまり蕗の薹

 それを受けて、

 東日本大震災の大津波で壊滅的な被害を受けた三陸気仙沼の牡蠣は、牡蠣漁師のたゆまぬ後背の山(魚付林)の保守により、豊かなミネラルの土壌と水で、見事に再生した。
 名草の芽踏んで魚付林の奥     菊田一平

 「名草」とはどういう意味か? 「コトバンク」には「花が美しい、薬効がある、などのためによく知られている草」とある。また各地の地名でもあるようだ。この言葉が普通名詞だとは知らなかった。
 私の知っている名草は画家の名前だ。25年前1995年の京橋のギャラリーアリエスで戸田名草の初個展を見た記憶がある。その7年後のミズマアートギャラリーの貸画廊部門ギャラリーエスでの個展も見た。その後は自由が丘のもみの木画廊で「フロンティア21」というグループ展に何度も参加していた。
 アリエスで見たとき戸田に名前の由来を聞いた。父が付けたんですと言っていた。ネットに彼女の履歴が載っていた。

戸田名草
Toda Nagusa

1970年 高知県生まれ
1993年 Rhode Island School of Design卒業
1998年 New York University大学院修了

1995年 戸田名草展 (ギャラリーアリエス
1998年 “Silent Majority” (80 Washington Square East Galleries)
       Small Works (80 Washington Square East Galleries)
2000年 第2回日韓青年作家美術交流展 (在日韓国大使館、韓国文化院)
2002年 戸田名草展 (ギャラリーエス)  

 他に作品も載っている。

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(1995年)

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(2002年)

 初個展から優れた画家だという印象だった。ギャラリーエスの個展では蜜蝋を使っていた。作品は小品だが、独特の画面を作っていた。
 しかしいつの間にか発表しなくなっていた。もう制作はしていないんだろうか。サリンジャーのように発表はしないで秘かに制作を続けているといいのだが。朝日新聞に載った俳句から戸田名草を思い出した。