菊のアザミウマ

 ベランダの鉢植えの野菊が少しおかしい。鉢土は濡れていて乾いていないのに、葉が内側にカールしている。葉の色も汚れたような感じだ。ルーペで見てみる。葉の表面にごく小さな黒っぽい粒々がびっしり付いている。
 すぐに分った。これはアザミウマの幼虫(若虫)だ。「キク アザミウマ」で検索すると、キクに寄生するアザミウマは、ミナミキイロアザミウマかクロゲハナアザミウマ、ミカンキイロアザミウマのいずれかだ。

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アザミウマ幼虫の群生

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成虫が上部に1頭、下部に2頭見える。葉を舐食するので白い斑点ができる


 近所のオリンピックへ殺虫剤を買いに行く。根元へ散布するオルトラン粒剤、希釈して噴霧するトレボン乳剤を買ってくる。

 アザミウマは翅が総(ふさ)状になっているので総翅目、別名アザミウマ目に属する昆虫。代表的なのはネギに寄生するネギアザミウマ。大量に寄生するとネギが白っぽくなる。学名のthripsからスリップスとも呼ばれる。
 前職で『農作物のアザミウマ』という本を編集し、関東から静岡まで取材して撮影したことがあったので、普通人より詳しいはずだ。そんな経験からスリップスに対しては愛着があり、好きな昆虫のひとつだ。
 今頃はクチナシが咲いているが、クチナシの花にもアザミウマがたくさん寄生している。花に息を吹きかけると花芯からわらわらと湧いて出てくる。そのことは以前このブログに紹介した。

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https://mmpolo.hatenadiary.com/entry/20180620/1529488893
 アザミウマといえばアザミウマ研究者の工藤巌先生を思い出す。一緒に静岡市の山奥の井川ダム周辺へアザミウマの撮影に行ったことがあった。井川は雑穀の宝庫でもあった。アワやヒエ、シコクビエ、キビなどが畑いっぱいにあって、中尾佐助の『栽培植物と農耕の起源』(岩波新書)で知った作物を目の前に見て感激したことを思い出す。

 

栽培植物と農耕の起源 (岩波新書 青版 G-103)

栽培植物と農耕の起源 (岩波新書 青版 G-103)

  • 作者:中尾 佐助
  • 発売日: 1966/01/25
  • メディア: 新書