Chim↑Pomの個展「友情か友喰いか友倒れか/BLACK OF DEATH」がすごい

 美術家集団Chim↑Pomについては2度紹介してきた。男5人女1人のユニットだ。

無人島プロダクションのChim Pom 「オーマイゴッド」展が面白かった」
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「NADiffの移転オープンとChim ↑ Pomの個展」(id:mmpolo:20080723)

 Chim↑Pomは今まで青木ヶ原樹海で誰かが首を括った枝を画廊に展示したり、ディズニーシーで全員裸になって撮影したり、6人の垢を集めて人形を作ったり、渋谷で捕まえたドブネズミの剥製でピカチューを作ったり、怪しいことを企画し実行してきた。先月は恵比寿のNADiffで地下のギャラリーに都会のどぶ川を再現したりした。寄席の色物ではないが、美術と際物とのボーダーラインのような気もしていたが、今回江東区清澄のギャラリーhiromi yoshiiでの個展を見て、彼らが際物などではなく、おそらく美術史に記録される美術家集団であることを確信した。伝説のゼロ次元よりまともで、あるいはハイレッドセンターと肩を並べるのではないか。
 今回の個展「友情か友喰いか友倒れか/BLACK OF DEATH」はギャラリーの中に作られた7平方メートル(2畳強)ほどの密閉された部屋に、メンバーの一人水野俊紀が、カラス1羽、ドブネズミ1匹と8月9日から30日までの22日間、一度も外へ出ることなく生活するという企画だ。
 カラスに襲われる心配はないのか画廊のスタッフに聞くと、8日目にしてすでに慣れてきていて、ネズミに至ってはシャツの中に入ってくるほどの関係だという。その部屋の正面に大きなガラスの入った窓があり中の様子が隅々まで観察できるようになっているが、実はこれはマジックミラーで水野さんは外を見ることはできない。部屋の中には本やテレビやゲーム機など何もなく、私が見たときは横になって寝ていた。
 夜も万一の場合に備えて画廊のスタッフが待機しているそうだが、非常事態が発生しない限り今月末までこのままここで過ごすのだという。
 このようなことが過去にも行われた例はあるが、それらはいずれも科学的実験として行われたのであり、今回のような意味のない企画ではなかった。意味のないと書いたが、おそらく都会での人とカラスとネズミの共存というのがテーマなのだろうが、これこそアートだと思う。
 優れたもの、新しいものはしばしば周縁から現れて世界を改革する、というのが密やかな私の法則だ。こんなおかしな連中からいま新しいものが生まれつつあるのではないか、それに立ち会えたことを嬉しく思う。
hiromi yoshiiのURL http://www.hiromiyoshii.com/