梅崎義人「動物保護運動の虚像」の衝撃

 出版は少し古いが、梅崎義人著「動物保護運動の虚像」(成山堂書店)を読んだ。これが衝撃的な内容だった。
 著者はこの本でグリーンピースWWF世界自然保護基金)を糾弾している。動物を絶滅から守るとして、まず捕鯨が禁止され、ついでアフリカ象の捕獲も禁止された。アザラシもオットセイも、鼈甲を(べっこう)をとるタイマイも。
 クジラについてはIWC国際捕鯨委員会)によって資源水準の低い大型鯨5種は捕獲禁止にされていた。またナガスクジライワシクジラマッコウクジラIWCの科学委員会で持続的捕獲が可能とされていた。ミンククジラは増加しすぎて生態系のバランスを崩し始めているとされていた。にもかかわらずグリーンピースWWFアメリカ政府を巻き込んで、捕鯨の全面的禁止に持ち込んだ。非常に汚い手を使って。
 アフリカ象については、1970年代初めに120万頭生息していたのが、15年後には60万頭に半減している。それでワシントン条約象牙の取引を禁止することになった。これも正確ではないのだ。ケニアウガンダタンザニアソマリア、ガーナ、セネガルなどの東西アフリカ諸国ではすさまじい密漁によって本当に絶滅寸前なのだ。ところが南アフリカボツワナジンバブエナミビアなどの南部アフリカでは象のの生息数は増加し、間引いているのだ。間引かなければ大食の象のために生態系が破壊されてしまう。ジンバブエでは適正生息水準の2.5倍の頭数になっている。それらの実態は無視されて、象牙の取引は禁止されている。
 イヌイットのアザラシ猟によって適正に管理されていたアザラシも、捕獲禁止になって数が増えすぎてしまい、エサのタラ資源が減少し、カナダ東北海域ではタラ漁が禁止に追いこまれた。イヌイットの社会も崩壊しつつある。
 アリュート人もオットセイに対して適正な管理をして、オットセイの数を増やしていたが、禁漁とされたため生息数の減少となってしまった。
 著者によれば、グリーンピースWWFも主目的は有色人種の差別だという。「はじめに」から。

 本書の狙いは、巨大環境団体による動物保護運動が、いかに虚偽に満ちていたか、という点を、客観的事実に基づいて報告することが第一である。第二には、環境・動物保護運動の源流を探ることである。妥協の余地を持たない独善、高圧、攻撃的、しかも大規模な運動の背後に何があるのか。この点がむしろ大きな狙いと言ってよい。そこにたどり着くまでにかなりの年月を要したが、実体はつかめた。欧米のエリート支配階級とローマクラブに突き当たったのである。この階層の人たちは、地球を自分たちが支配できる規模に保つために、有色人国家の経済と人口の成長を、できるだけゼロに近づける戦略を持っている。その一環として環境・動物保護運動を起こしているのである。

 この本はトンデモ本ではない。著者は水産ジャーナリストで、少しもヒステリックなところはなく、裏付けを示しながら説得力のある議論を展開している。私の読んだのは1999年発行の再販だが、最近は5訂版も出ているようだ。
 You Tubeに著者の語っている映像がアップされている.


捕鯨問題】梅崎義人(水産ジャーナリスト)  「アジア・アフリカ経済を叩くために始まった環境保護運動 鯨を巡る海洋資源の現実」
http://jp.youtube.com/watch?v=IqoyKEMyfrE