丸木スマ展が面白かった

 丸木スマ展を見てきた。埼玉県立近代美術館で8月31日まで。丸木スマ(1875ー1956)は原爆の絵で有名な画家丸木位里の母親、画家丸木俊は嫁になる。
 生涯農婦としてすごしてきたが、70歳になったとき丸木俊に勧められて初めて絵筆を握り、それが好評だったために亡くなるまでの10年で700点以上の作品を残した。

丸木スマ「母猫」
 図版に見られるように幼児のような絵だ。ふつう大人がこういう絵を描けるものではない。見ていて何度も声を出して笑ってしまった。「めし」の動物は何だろう。だがこの下手な絵がすばらしいのだ。山口晃の絵を見ると巧いというのはすばらしいと思うが、丸木スマの絵を見ると巧いことはすばらしい絵の必要条件でないことがよく分かる。
 色彩感覚が優れているのも事実だろう。山本弘も言っていたが、色彩は天分なのだ。樹木などがぎっしり描き込まれている作品は、やはり素朴派のアンリ・ルソーと共通するものがあった。動物の形のデフォルメは熊谷守一を連想させた。
 興味深い展覧会だった。埼玉県立近代美術館はときどきすばらしい企画を立ててくれる。