おこげのお浸し

 私が育った長野県の飯田地方は昆虫食のセンターでもあるが、「おこげ」という低木の新芽をお浸しにして食べていた。春芽吹いた時、それを摘んでお浸しにする。ちょっとでも葉が大きくなると硬くなって食べられない。だから食べられるのはほんの短い期間だ。
 この「おこげ」って本当の名前は何だろうと植物学者の浅野貞夫先生に聞いてみた。帰省した折り標本を採集してきたのだ。ヤマウコギだという。別名ウコギ。それが訛ってオコゲになったのだろう。
 これを食べる習慣のある地域が少ないのではないか。長野県、福島県山形県というのも聞いた。東京のスーパーや八百屋に並んでいるのを見たことはない。飯田地方でも専門に栽培している畑がある訳ではなく、普通垣根代わりに家の回りに植えている。枝にトゲがあり、低木ながら垣根になるのだろう。
 食べたいと言ったらお袋が郵送してくれた。お浸しにしてみたがうまくなかった。鮮度が大切なのかもしれない。ちょっと苦くて慣れるとクセになるのだ。