中国現代絵画展を見て

 東京駅前の丸ビルが新しく建て直されてもう3年くらい経ったのだろうか。私は初めて入ったが、昔の印象とは天と地ほど違った。初代丸ビルは大きな雑居ビルというのが本質で、細かく区分けした狭い部屋にたくさんの小さな会社が入っていた。そのうちの1社が私のクライアントで、社長がちんけなおっさんだった。業界でも変わり者で通っていたが、利益だけはしっかり上げていた。何が変かって、例えば暮れのボーナスの支給日は12月の社長の出勤日で、社長手ずから現金で渡していた。その社長がときどきしか出社しないのだ。社員はいつボーナスが支払われるのか分からない。また、小さな事務所を仕切って3分の1くらいを社長室とし、残りの空間に社員がごちゃごちゃ詰め込まれていた。
 久しぶりに丸ビルを訪ねたのは、7階のホールでツァイト・フォトサロンの社長が収集した中国現代絵画展が開かれているからだ(8月21日まで)。中国現代美術は現在バブルの真っ最中で1点1億円の画家が輩出しているようだ。絵画バブルの原因はもちろん中国経済の好調で、美術の質とは関係ない模様だ。これに関しては、以前中津川浩章さんの報告を転載したことがある。

「中津川浩章の「上海アート紀行」からー中国の現代アートについて」(id:mmpolo:20071206)

 今回このようにまとめて見ることによって私にも分かったことがある。中国の現代美術は、それまでの社会主義リアリズムに現代美術の衣装を着せただけで、新しいものを生み出したわけではない。世界の美術になんら貢献することはない。特に無理して見なくてもいいだろう。こんなことを書くと、またどこぞの画廊のおじさんに、分からないくせに生意気言うなと叱られるかもしれないが。