山本弘の作品解説(24)「伐木」

 山本弘「伐木」油彩、F15号(65cm x 53cm)
 1977年に制作された。伐木とは文字どおり伐られた木だ。どうしてこんなものを描いたのだろうと不思議だった。
 最近、酒井忠康「早世の天才画家」(中公新書)を読んだ。萬鉄五郎から松本俊介まで12人の画家が取り上げられているが、その中に小出楢重があった。小出は1887年に生まれ、1931年に44歳で亡くなっている。晩年の1930年に描かれた小出の絶筆が「枯木のある風景」だという。この図版を見たとき、山本弘の「伐木」の本歌はこれではないかと思った。
 山本弘は好きだった長谷川利行の絵を何度も本歌取りして描いていた。だから空き地か何かで丸太が転がっているのを見たとき、小出楢重の「枯木のある風景」を思い出し、山本弘の「伐木」を描いたのかもしれない。しかし小出と山本には大きな違いもある。丸太2本だけで絵画を構成する近代性だ。山本の力でもある。

(未亡人所蔵)

小出楢重「枯木のある風景」