東京国立近代美術館の吉川霊華展を見て


 東京国立近代美術館で行われた吉川霊華展「近代にうまれた線の探求者」を見た(2012年6月12日−7月29日)。吉川霊華は1875年生まれ、1929年に54歳で亡くなっている。展覧会のちらしから、

吉川霊華といってもほとんどの人はご存知ないかもしれません。
物語や道釈人物を画題としているからといって、敬遠しないでください。霊華の作品の魅力はその線にあります。細く、速度をもってリズミカルに継がれてゆく線が、山となり雲となり、人をかたどったかと思えば、余白に散らされた仮名となる。書も画も一体となったようなその独歩の世界に息をひそめて近づくと、かすかに、たとえようもなく美しい音曲が聞こえてくるはずです。
やまと絵の研究からはじめて広く東洋芸術を研究した霊華。1916年に鏑木清方平福百穂らと結成した金鈴社という舞台を得て画壇にその名が知られるようになっても、帝展などの大きな展覧会からは距離を置き、孤高の芸術を拓きました。その信念は、「正しき伝統の理想は復古であると同時に未来である」という言葉に現れています。やがて時代が霊華に追いつき、昭和にかけてさまざまに線描美の探求がおこなわれるようになっても、霊華はゆうゆうと孤高をたもち続けました。

 実に的確に霊華を解説している。霊華は物語を線で描いている。それはみごとな線描だ。この展覧会を見た画家たちが霊華を讃えている。巧いのだ。画家たちが高く評価する画家と言える。
 ただ画家でない私にはあまりおもしろい展覧会ではなかった。線描の高い技術の魅力がよく分からない場合、どこを評価したら良いのだろう。しかし、こんな風に評価することしかできないことが、私の審美眼の限界を露呈していると言うべきなのかもしれない。美術評論家の評価を聞いてみたい。