以前、渋谷のホテル街で東電OL殺人事件の事件現場アパートを探し歩いていたとき、ルテシアという名前のホテルを見つけ、その名前がなぜか気になった。しばらくして、ロベール・アンリコが監督したフランス映画『冒険者たち』のヒロインの名前がレティシアだったことを思い出した。これは1967年公開のフランス映画で、ジョアンナ・シムカス演じるレティシアにアラン・ドロンとリノ・バンチュラの二人の男が恋をするという映画だった。男二人の友情と女との三角関係を描いて切なかった記憶がある。
『冒険者たち』に関するAmazonのレビューから
郊外の飛行クラブでインストラクターをしているマヌー(アラン・ドロン)と新型エンジンの開発に熱中す元レースカーのエンジニア・ローラン(リノ・バンチュラ)のもとに、レティシア(ジョアンナ・シムカス)という女性が現れる。芸術家の卵である彼女に恋心を抱くふたり。やがて3人は、アフリカの海底に5億フランの財宝が眠っているとの話を聞き、コンゴに旅立つ。
男ふたり、女ひとりの恋愛関係、複葉機で凱旋門をくぐるマヌー、船の上でふざけあう3人、海中に沈んでいくレティシアの遺体、そして海にぽっかりと浮かぶ軍艦島。口笛を使ったフランソワ・ド・ルーペの音楽が、名シーンの数々をいっそう忘れがたくしている青春映画として、友情を描いた作品として、冒険を描いた作品として、その輝きは永遠に色あせることはないだろう。マヌー、ローラン、レティシア、まるで実在するかのように彼らと彼らの行動が愛おしくなってしまう。ロベール・アンリコ監督の映画には、いつまでたっても大人になりきれない人間が登場し、夢追い人たちに微笑みかける。(斉藤守彦)
またフランスの自動車メーカーのルノーからルーテシアという小型乗用車が発売されていた。ホテルのルテシア、『冒険者たち』のレティシア、ルノーのルーテシア、これらにはどんな共通項があるのだろうと疑問に思っていた。
その謎が解けたのは、木村泰司『名画の言い分』(ちくま文庫)を読んだときだった。その「キリスト教美術の誕生」の章にこう書かれている。
パリ発祥の地はシテ島ですが、シテ島には今、ノートルダム大聖堂が建っています。パリはもともとケルト人の街でした。その当時、ノートルダム大聖堂のある場所には、ケルト人が宗教儀式を執り行う祭壇が置かれていました。その後、ローマが勢力を伸ばしてパリがローマ人の街となり、ルテティアと名を変えます。
そうか、パリの古名がルテティアだったのだ。それがルノーの名になり、『冒険者たち』のヒロインの名前になり、渋谷のホテルの名前になったのか。
ジョアンナ・シムカス
ルノーのルーテシア
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