中井久夫『私の日本語雑記』を読む

中井久夫『私の日本語雑記』(岩波現代文庫)を読む。これが素晴らしかった。日本語雑記の表題通り雑記なのだが、文章論であり日本語の特徴論でもあり、また言語の起源論にも及んでいる。専門家ではないと謙遜するが、その内容はとても深く「雑記」という表…

いりや画廊の奥田誠一個展を見る

東京入谷のいりや画廊で奥田誠一個展「surface」が開かれている(4月23日まで)。奥田は国立滋賀大学教育学部を卒業している。年齢は50歳代らしい。主に関西方面の画廊で発表してきた。東京では初個展となる。 奥田は焦がした和紙を人型に貼り込んで立体作…

田原総一朗+藤井聡『こうすれば絶対よくなる! 日本経済』を読む

田原総一朗+藤井聡『こうすれば絶対よくなる! 日本経済』(アスコム)を読む。雑誌『ちくま』に斎藤美奈子が紹介していた(2021年12月号)。しかし、藤井は安倍政権の元内閣官房参与、MMT(Modern Monetary Theory=現代貨幣理論)を信奉している。MMTでは…

小島びじゅつ室の「絵画という風景 展」を見る

東京大田区南雪谷の小島びじゅつ室で「絵画という風景 展」が開かれている(4月17日まで)。出品作家は涌田優樹と立原真理子。ここでは立原を紹介する。 立原は茨城県生まれ、2006年に女子美術大学芸術学部洋画専攻を卒業し、2008年に東京芸術大学大学院美…

ギャラリー砂翁&トモスの菅野美榮展を見る

東京表参道のギャラリー砂翁&トモスで菅野美榮展が開かれている(4月23日まで)。菅野は群馬県出身、1968年共立女子短期大学を卒業したのち、1971年日本デザインスクールを卒業している。1990年、銀座のギャラリー・オカベで初個展。その後、ギャラリート…

銀座蔦屋書店のイケムラレイコ+塩田千春展を見る

東京銀座のGINZA SIX 6階、銀座蔦屋書店で「手の中に抱く宇宙 イケムラレイコ+塩田千春」刊行記念展覧会が開かれている(4月13日まで)。 イケムラレイコ Lying Head イケムラレイコ イケムラレイコ 二人の合作 二人の合作 イケムラレイコはガラスのLying …

山本弘の作品解説(109)(題不詳)

山本弘(題不詳)、油彩、F10号(45.4cm×53.0cm) 制作年不明、サインなし、実は絵の天地も不明。木枠の下端に当るキャンバスに汚れが付いているので、その辺を下とした。制作年代もタイトルもサインも付いていないのは最晩年にときどき見られる。これもやは…

「ポーラ ミュージアム アネックス展 2022  vol.2」を見る

東京銀座のポーラ ミュージアム アネックスで「ポーラ ミュージアム アネックス展 2022 vol.2」が開かれている(4月17日まで)。このvol.2の参加者は菅野創・北條知子・寺嶋孝佳の3人。菅野はおもちゃのロボットのような動き回るオブジェを出品し、寺嶋は…

TAKU SOMETANIギャラリーのみょうじなまえ個展を見る

東京神宮前のTAKU SOMETANIギャラリーでみょうじなまえ個展「Some Fairy Tales」が開かれている(4月24日まで)。みょうじは2019年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業、2020年にTAKU SOMETANIギャラリーで初個展をしている。 ギャラリーのホームペー…

銀座K’sギャラリーの上野憲男展を見る

東京銀座の銀座K’sギャラリーで開廊20周年記念上野憲男展が開かれている(4月16日まで)。2002年に「上野憲男、カジ・ギャスディン、佐野ぬい3人展」でオープンしたK’sギャラリーが今年20周年を迎えた。 その3人の個展を企画したのだったが、上野は昨年亡く…

ギャラリー・ブルー3143の元木孝美展を見る

東京表参道のギャラリー・ブルー3143で元木孝美展「microcosm」が開かれている(4月10日まで)。元木は1975年神奈川県生まれ、2003年に東北芸術工科大学大学院芸術工学研究科を修了している。2014年から東北芸術工科大学講師を努める。 今回小さなギャラリ…

小林貴子『句集 黄金分割』を読む

小林貴子『句集 黄金分割』(朔書房)を読む。小林は1959(昭和34)年、長野県飯田市生まれ。松本の「岳」俳句会に所属し編集長を務めている。先に亡くなった稲畑汀子に代わって、4月から朝日俳壇の選者に就任した。 本書は2008(平成21)年~2014(平成26…

ギャルリー東京ユマニテの井上雅之展―多摩美術大学退職記念―を見る

東京京橋のギャルリー東京ユマニテで井上雅之展 ―多摩美術大学退職記念― が開かれている(4月23日まで)。井上は1957年神戸市出身、1985年多摩美術大学大学院美術研究科修士課程修了。2017年第24回日本陶芸展大賞受賞。1980年代から陶を素材に立体作品の制…

矢島渚男『虚子点描』を読む

矢島渚男『虚子点描』(紅書房)を読む。本書について矢島が「あとがき」で書いている。 これは自分の俳誌『梟』に毎号1ページの短文を「虚子雑談」として好きな句や気になる句を季節に従いつつ、青年時代を書いたり、晩年の作品に行ったり、壮年期に戻った…

門田秀雄「美術史から消えた『労働者』」

2月に亡くなった門田秀雄さんの古いエッセイを再録する。これは13年前の2009年11月19日に掲載された(日本経済新聞朝刊)。忘れられた前衛美術家でプロレタリア美術家の岡本唐貴と入江比呂を紹介している。その「美術史から消えた『労働者』」全文を下に引く…

門田秀雄「瀧口修造論試論『批評も思想ぬきで成り立つ』」

昨日の本欄で紹介したが、先月20日、門田秀雄さんが亡くなった。門田さんは優れた美術評論家だったが、代表作になるべき瀧口修造論は未完のまま終わってしまった。ただ15年前に講演をし、その時のレジュメがあるので、ここにそれを再録して紹介する。 * 200…

門田秀雄さん亡くなる

門田秀雄さんが亡くなったという。2月20日に群馬県の施設でだった。門田さんは美術評論家で美術作家だった。美術批評誌『構造』を一人で主宰・発行していた。最後に発行したのは2003年6月の第14号だった。2007年にまだ次の第15号を発行すると言われていた。…

荒川洋治 編『昭和の名短篇』を読む

荒川洋治 編『昭和の名短篇』(中公文庫)を読む。荒川洋治は現代詩人だが、本の読み巧者でもある。荒川の取り上げる書評は面白く私は絶大な信頼を寄せている。その荒川が取り上げた昭和の名短篇のアンソロジー。志賀直哉から色川武大までの14人の作家の14作…

トキ・アートスペースの吉川和江展を見る

東京外苑前(神宮前)のトキ・アートスペースで吉川和江展が開かれている(4月10日まで)。吉川は東京生まれ、1969年に武蔵野美術大学を卒業し、1976年ドイツのハンブルグ国立美術大学に入学し、1986年に同校を卒業している。現在ハンブルグ在住。1983年ハ…

小山登美夫『“お金”から見る現代アート』を読む

小山登美夫『“お金”から見る現代アート』(講談社+α文庫)を読む。現代アートの代表的なギャラリスト小山登美夫が現代アートと呼ばれる最近の美術ついて、主に経済的な面から紹介している。「現代アートビジネスの入門書」というのが惹句。もっとも本書の親…

スカイ・ザ・バスハウスの遠藤利克展を見る

東京谷中のスカイ・ザ・バスハウスで遠藤利克展が開かれている(5月14日まで)。5年前に埼玉県立近代美術館で遠藤の大規模な回顧展があった。その時の美術館のちらしから、 遠藤利克(1950−)は現代日本を代表する彫刻家です。1960年代から70年代にかけて芸…

東京都美術館の「人人展」を見る

東京上野の東京都美術館で「人人展」が開かれている(3月31日まで)。「人人展」は異端の日本画か中村正義の提唱で生まれたグループ展だ。昨年はコロナで開催を見送ったが今年は予定通り開催された。 長く事務局長を務めてきた郡司宏が2020年の11月に亡くな…

国立新美術館の日本アンデパンダン展を見る

東京六本木の国立新美術館で日本アンデパンダン展が開かれている(4月4日まで)。今まで知人たちが毎年出品していたのに、みな高齢のためか名前が見当たらなかった。残念だ。 気になった何人かの作品を紹介したい。 井上活魂「ぼくとおばあさん」 井上活魂…

江藤淳『石原慎太郎・大江健三郎』を読む

江藤淳『石原慎太郎・大江健三郎』(中公文庫)を読む。江藤が石原と大江について書いたのをまとめたもので、文庫オリジナルとうたっている。とはいえ、石原への言及が多く、大江に関しては初期に高く評価したものの、『万延元年のフットボール』あたりから…

死臭について

高見順の詩「三階の部屋」を引く。 三階の部屋 窓のそばの大木の枝に カラスがいっぱい集まってきた があがあと口々に喚(わめ)き立てる あっち行けとおれは手を振って追い立てたが 真黒な鳥どもはびくともしない 不吉な鳥どもはふえる一方だ おれの部屋は…

銀座K’sギャラリーとポルトリブレ デ・ノーヴォの郡司宏遺作展を見る

東京銀座の銀座K’sギャラリーと東京高円寺のポルトリブレ デ・ノーヴォで郡司宏遺作展が開かれている(3月26日まで=K’s、3月28日まで=ポルト)。郡司は1952年東京都生まれ、初め版画を制作していたが、その後タブローを発表していた。個展は1985年のシロ…

ギャラリーナユタの中津川浩章展「木と話す」を見る

東京銀座のギャラリーナユタで中津川浩章展「木と話す」が開かれている(4月9日まで)。中津川は1958年静岡県生まれ。和光大学で学び、個展をギャラリイK、パーソナルギャラリー地中海などで数回ずつ開き、その他、ギャラリーJin、ギャラリー日鉱、マキイ…

曹良奎とチャン・デュク・タオ、そしてマチス

曹良奎「密閉せる倉庫」 曹良奎という画家がいた。在日の画家だった。優れた絵を描いていたが、差別に苦しんだようで、北朝鮮への帰国運動のとき、北へ行ってしまった。曹自身は現在の韓国の済州島出身だったが。作品はほとんどを持って行って、洲之内徹や針…

高見順『死の淵より』を読む

高見順『死の淵より』(講談社文芸文庫)を読む。1963年(昭和38年)、高見順は食道がんと診断され、手術を受ける。翌年6月、再度入院し手術を受ける。詩集「死の淵より」を発表する。これによって野間文芸賞受賞。12月入院し手術を受ける。翌1965年3月、ま…

筒井康隆『誰にもわかるハイデガー』を読む

筒井康隆『誰にもわかるハイデガー』(河出文庫)を読む。副題が「文学部唯野教授・最終講義」で、32年前の1990年に池袋西武スタジオで講演した講演録。それに大澤真幸が長い解説を付けている。 いや、筒井康隆のハイデガーなんてどうせ面白エッセイの類だろ…