収集家は男たち

 ササラダニの専門家青木淳一が東大出版会のPR誌『UP』8月号に「採集の楽しみ」というエッセイを書いている。

 自然のなかでものを採集したり集めたりすることは、子どもたちにとっても、趣味で動植物や鉱物を集めている人たちにとっても、専門家や研究者たちにとっても、まことに楽しいものである。しかし、おもしろいことに、ものを集めることにとくに喜びを感じるのは男性である。いわゆる収集家とよばれる人に女性はあまり見かけない。したがって、動植物の分類学者にも昆虫のコレクターにも女性は少ない。なぜ、そうなのか。ものを集める本能は男性に特有なものなのか。採集狩猟時代の男の仕事の名残なのか、私にはよくわからない。

 これは美術品のコレクターでも同じような傾向があるように思われる。やはり圧倒的に男性コレクターが多いのだ。収集と性が関係するのだろうか。
 思い出すことがある。以前なびす画廊やギャラリーちめんかのやで発表していた男性画家はいつも裸の男たちが戯れている絵を描いていた。なかでも浴室で裸の男が四つん這いになっており、それを背後から裸の男が2人覗きこんでいる作品が印象的だった。2人の男は尻の穴を覗きこんでいるように見える。男性同性愛者=女性化した男と短絡的に考えた私は、男(の意識)が女に変わっても、男の性向である「見たい」欲望は変わらないのかと感心した。また、地下鉄日本橋駅のトイレで巧妙に作られた穴を発見したこともある。これも同性愛傾向の男が、男のペニスを覗き見るために作ったものだった。
 もし同性愛傾向のある男性が、何かのコレクターでもあったら、「男」「女」の特質は、性的傾向とは別のもっと深いところに関係しているかもしれないと妄想してしまう。
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トイレの覗き穴(2010年11月17日)