ドイツのミステリ『深い疵』がおもしろかった

 ドイツの作家ネレ・ノイハウスのミステリ『深い疵(きず)』(創元推理文庫)がおもしろかった。ドイツで累計200万部突破の警察小説シリーズとのこと。裏表紙の紹介より、

ホロコーストを生き残り、アメリカ大統領顧問をつとめた著名なユダヤ人が射殺された。凶器は第二次世界大戦期の拳銃で、現場には「16145」の数字が残されていた。司法解剖の結果、被害者がナチス武装親衛隊員だったという事実が判明する。(後略)

 貴族出身のオリヴァー・フォン・ボーデンシュタイン首席警部と部下のピア・キルヒホフ警部(女性)のコンビを主人公とするシリーズが、ドイツですでに5作出版されているという。日本での翻訳は本書が初めて。殺人事件が次々に起こり、解決の糸口もつかめないまま事態は複雑化する。登場人物も多く、しばしば冒頭の登場人物一覧表を参照しなければならなかった。
 ドイツは戦前からナチスの問題があり、それを取り込んでミステリの奥行きは深い。最後まで真犯人の予想を裏切りなかなか楽しめた。ただ余分と思われるエピソードも多く、殺人の方法にも多少無理があるように感じられた。
 次の作品もすでに訳了しているという。出版されたらそれも読んでみよう。

深い疵 (創元推理文庫)

深い疵 (創元推理文庫)